医学部医学科の研究者が、11月28日に神奈川県藤沢市の湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)で行われた「第2回MARC×湘南アイパーク シーズ発表会」で研究シーズを紹介しました。この発表会は、日本発の医薬品や医療機器の早期実用化を目指して慶應義塾大学を中心に首都圏の私立大学などが連携した「首都圏ARコンソーシアム(MARC)」と、日本最大級のライフサイエンス研究施設である湘南アイパークが開催する、アカデミアと企業のマッチングイベントです。本学科からは、柳川享世助教(基礎医学系生体機能学領域)と前原美樹特定研究員(外科学系整形外科学領域)の研究シーズを紹介しました。
柳川助教が取り組む「標的指向性エクソソームを用いた肝再生促進治療法の開発」については、共同研究者の稲垣豊教授(総合医学研究所)が「MARC参加大学のイチオシシーズ」の1つとして代理でプレゼンテーションし、ポスターでも発表。悪化すると肝硬変や肝臓がんを引き起こす線維化した肝臓の再生因子として研究グループが同定した、エクソソーム(細胞外分泌小胞)内包タンパク質「OGFRL1」の肝細胞再生の作用機序や、OGFRL1を治療標的臓器に選択的に届けるための薬剤送達技術(ドラッグデリバリーシステム)の研究成果を紹介しました。
前原特定研究員の「関節疾患の治療および予防のためのエクソソーム医薬組成物」の概要は、同じ研究室に所属する豊田恵利子特任准教授がポスターで説明。変形性膝関節症の治療で用いる軟骨細胞シート(軟骨細胞を培養して作製した移植用のシート)が、硝子軟骨の再生に寄与するmiRNA(マイクロRNA=遺伝子の発現などに作用する物質)を内包したエクソソームを放出することに着目し、同物質を用いた関節疾患の治療?予防薬の開発の可能性につながる成果を紹介しました。
ポスター発表では、研究の詳細や臨床応用の可能性について、湘南アイパークに入居する製薬企業の研究者らと熱心に意見を交わす姿が見られました。研究イノベーションセンターの穂積勝人所長(基礎医学系生体防御学領域教授)は、「こうした発表会は、研究の内容や可能性を製薬企業の研究者らにしっかりと理解してもらうとともに、ディスカッションを通じて新たな視点を見いだす機会としても重要です。基礎研究の成果を少しでも早く臨床につなげるため、今後も積極的に研究シーズをアピールしたい」と話しています。