総合医学研究所が11月25日に伊勢原キャンパスで、第2回公開セミナーを開催しました。本研究所の中川草准教授(医学部医学科基礎医学系分子生命科学領域)が中心になって進めるコアプロジェクト「ウイルス様エレメント(VE)研究基盤の創設と発展」のさらなる充実を目指し、関連分野の研究者を招いて実施しているものです。今回は、カナダ?ブリティッシュコロンビア大学助教授のマリア?トクヤマ氏が、「内在性レトロウイルス(※)と免疫のクロストーク」をテーマに講演。所員や医学部の教員をはじめ、研究イノベーションセンターの職員や大学院生ら多数が参加しました。
初めに中川准教授が、炎症や疾患の要因となる多様なVE(ウイルス由来の塩基配列)に関するデータベースの構築と、その解析による疾患の発症機序の解明などを目指すコアプロジェクトの概要を紹介。「ゲノム科学の観点から内在性レトロウイルスを含めたVEの機能を明らかにする研究を進めていますが、今回は、ウイルス学?免疫学が専門のトクヤマ先生に内在性レトロウイルスと免疫に関する最新研究を紹介いただき、その理解を深めたいと思います」とあいさつしました。
続いてトクヤマ氏が、これまでの研究や内在性レトロウイルスに注目したきっかけを紹介。単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)により発症する性器ヘルペスウイルス感染症が内在性レトロウイルスの発現によって抑制されるといった、近年の研究成果について解説しました。また、この感染防御機能が、これまで考えられてきた内在性レトロウイルスによる感染防御のメカニズムと異なる点に着目し、新たな免疫機能の解明を進めていることも紹介。さらに、bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户感染による症状と内在性レトロウイルスの発現の関連を明らかにする研究についても説明しました。講演後には活発な質疑応答や意見交換が展開され、最後に中川准教授が「今後も情報を交換し、コアプロジェクトの推進に生かしたい」と述べました。
※内在性レトロウイルス:レトロウイルスのRNA分子の遺伝情報がヒトを含めた宿主ゲノムに組み込まれ、進化の過程で遺伝情報として受け継がれるようになったレトロウイルス由来のDNA配列