医学部付属病院が大規模災害発生を想定した院内災害対応訓練を行いました

医学部付属病院では昨年12月から1月にかけての計3日間、大規模災害の発生を想定した院内災害対応訓練を行いました。本病院は、災害時に重症傷病者の救命医療などを担う、神奈川県の災害拠点病院に指定されています。今回は、本病院の災害医療対策マニュアルに基づく対応力の強化や関係機関との連携促進を図るため、病院が所在する伊勢原市と同消防本部、伊勢原協同病院と協力して実施しました。

12月10日には伊勢原キャンパスを会場に、オンラインを併用して「災害に関する勉強会」を開催。院内災害対策小委員会委員長の青木弘道講師(医学部医学科)と同委員の中嶋康弘看護師(看護師キャリア支援センター)、伊勢原市危機管理課の職員が講演し、災害発生時の初期対応や同市の災害対策について理解を深めました。1月10日の「机上訓練」では、渡辺雅彦病院長(医学部医学科教授)を本部長とする災害対策本部の指揮の下、事務職員はスタッフの安否確認や人員配置の調整、ライフラインの確保、物資の調達といった管理統括部門における初期対応について確認。医療従事者らは傷病者の受け付けから、重症、中等症、軽症に分けるトリアージ、重症度別診療エリアでの患者の受け入れと対応、入院?手術の調整までの流れをシミュレーションしました。また、各エリアのパソコンから傷病者のデータを入力し、全エリアでリアルタイムに患者情報が共有できるシステムのテスト運用も行いました。

26日には、震度6強の首都南部直下地震の発生を想定して行われた伊勢原市総合防災訓練に合わせて、本病院内で「実動訓練」を実施。本学医学部と、救命救急士を志す湘央生命科学技術専門学校の学生が模擬患者役として参加し、総勢約130名が訓練に取り組みました。当日は、伊勢原市の萩原鉄也市長が、メイン会場となった本病院の東海ホールを視察。「南海トラフ地震の30年以内の発生確率が80%とされる中、市でもさまざまな対策を講じています。実りある訓練になるよう期待しています」とあいさつしました。訓練では、意識不明や骨折などの重症患者から、糖尿病や認知症といった既往症を持つ者、妊婦、幼児まで、次々に搬送される模擬患者に対応。患者役を務めた医学部の学生は、「災害現場という特殊な状況下で医師に求められるスキルは何かを考える機会になりました」「多職種連携によるチーム医療を、日常の診療とは異なる視点から学べてよかった」と話していました。

さらに、今回は初めて、本病院の災害対策本部と伊勢原市総合防災訓練の主会場となった神奈川県立伊勢原高校、伊勢原協同病院をオンラインでつなぎ、傷病者に関する情報の共有や搬送先を調整する訓練にも取り組み、伊勢原高校から救急車で搬送された重症患者の受け入れや、伊勢原協同病院への患者移送も行いました。

終了後は講堂に集合し、疑問点や改善点を共有。青木講師は、「皆さんの意見を基にマニュアルを見直し、災害時の対応力を強化したい」と語り、神奈川県の災害医療コーディネーターを務める高度救命救急センターの中川儀英教授は、「関係機関との合同訓練は、課題を見出し、解決するためにも重要です。今後も連携して実施していきたい」と講評しました。最後に渡辺病院長が関係機関への謝辞を述べ、「災害時に職員が迅速に参集できるシステムを構築するとともに、必要な機器や備品の確保も進めます。全職員が災害に対する意識を高め、適切に対応できるよう、今日の経験を各セクションで共有してください」と結びました。