医学部の金児-石野客員教授らがウイルス由来遺伝子と自閉症や肥満、うつ症状との関係を明らかにしました

医学部の金児-石野知子客員教授と東京科学大学の石野史敏名誉教授らの研究グループが、自閉スペクトラム症(ASD)の原因遺伝子と考えられているウイルス由来の哺乳類特異的獲得遺伝子「RTL4」の脳内における動態を解明。その成果をまとめた論文が、12月23日に国際科学誌『International Journal of Molecular Sciences』オンライン版に掲載されました。また、同じ遺伝子群である「RTL8A」「RTL8B」が、成体期における肥満やうつ症状に関与することを明らかにした論文も、1月29日にイギリス王立協会が発行する科学雑誌『Open Biology』に掲載されました。

金児-石野客員教授らは、太古に哺乳類の祖先のゲノムに入り込んだ11個のウイルス由来の遺伝子(RTL/SIRH遺伝子群)の機能解明に取り組んでいます。2015年にはマウスを使った実験で、RTL4の欠損が衝動性の亢進や新規環境への適応不全を示すことを明らかにしましたが、RTL4の発現が極めて少ないため、脳内での機能の実態は不明のままでした。今回の研究では、マウスのRTL4に蛍光物質を付加し、同遺伝子から合成されたRTL4タンパク質を光らせることで発現部位や動態を解析。この遺伝子が脳の免疫を担う細胞「ミクログリア」で発現し、神経伝達物質「ノルアドレナリン」の刺激によってタンパク質が分泌されることを見出しました。ASDの発症に関与するとされるRTL4の脳内における動態の解明は、疾患の発症メカニズムの解明や新たな治療薬の開発につながると期待されます。

一方、RTL8ARTL8B遺伝子を欠損させたマウスの実験では、成体期から体重が増加し、活動力や社交性の低下、うつ様の行動を確認。2つの遺伝子から合成されるタンパク質が脳の前頭前野と視床下部で発現していることから、両遺伝子の異常が脳の機能不全に関与することを明らかにしました。また、これらの症状が、染色体の異常により発症する難病「プラダー?ウィリー症候群」(PWS)の症状に類似していることから、PWSの発症機序の解明や治療法開発に貢献する可能性も示唆されました。

金児-石野客員教授は、「ウイルス由来のDNA配列は有用性が低いとされ、長らく研究の対象外とされてきましたが、これらが哺乳類に保存されているのには必ず深い意味があると信じてRTL/SIRH遺伝子群の解析を進めてきました。これまでに11個のうち10個の遺伝子の機能を解明してきましたが、哺乳類にはRTL/SIRH以外にも、ウイルス由来の配列で重要な働きを持つ未知の遺伝子が数多くあると考えられます。ポスドク時代に時間をかけて考えた研究テーマを30数年にわたり追究し、楽しみながら育て、発展させられたことを、とても幸せに思います」と話しています。

※掲載された2つの論文は下記URLからご覧いただけます。
『International Journal of Molecular Sciences』
https://www.mdpi.com/1422-0067/25/24/13738

『Open Biology』
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsob.240279