医学部医学科では3月12日に伊勢原キャンパスで、「2024年度医学部医学科研究成果報告会」を実施しました。本学科では、医学とその関連諸領域における研究レベルの向上や優れた研究の支援を目的として研究助成制度を設け、毎年その成果を共有しています。今回は、助成を受けた7テーマに加え、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)「創発的研究支援事業」に採択された研究についても発表。教職員や学生、大学院生、生命科学統合支援室のスタッフら多数が参加しました。
成果報告に先立ち、大学院医学研究科の秦野伸二研究科長(基礎医学系生体機能学領域教授)が登壇。「研究者同士のコミュニケーションによって新しい気づきや課題が見えてきます。研究のさらなる活性化に向けて、活発な議論をお願いします」とあいさつしました。



続いて、松前ひろみ講師(基礎医学系分子生命科学領域)が、「創発的研究支援事業」の支援を受けて2021年から取り組んでいる「生物学と人文科学の融合:人類情報学(Anthropological Informatics)の構築」の概要を紹介。進化生物学と生物(自然)人類学、情報科学の3つの学問領域の考え方を取り入れた、人間らしさを総合的に解明するための研究について、進捗状況や今後の展開を説明しました。
医学科の助成制度を受けた研究成果については、初めに後藤信一講師(総合診療学系総合内科学領域)が、「医学部医学科プロジェクト研究」に採択された「AIによる特徴抽出を用いたHFpEFの新規予防法治療標的探索」をテーマに発表。有効な治療法のない心不全の一種「HFpEF」を予防するための標的となる遺伝子の探索方法と探索結果を報告しました。続いて、「医学研究基金」の対象者2名と、「医学部研究助成金(重点的研究助成)」を受けた4名が採択期間の満了に伴う終了報告を行い、活発な質疑応答や意見交換を展開しました。






最後に、研究イノベーションセンターの穂積勝人所長(基礎医学系生体防御学領域教授)が講評。「今回も発展の可能性が感じられる質の高い研究成果が発表されました。近年は、仮説を証明するために求められるデータのレベルと量が各段に上がっており、これに対応するためには学内外のネットワークの構築と研究者の協力が不可欠です。引き続き研究者が交流できる機会を設けていきます」と結びました。
※当日のプログラムは以下のとおりです。
【はじめに】
秦野伸二[大学院医学研究科長 基礎医学系生体機能学領域教授 総合医学研究所所員]
【特別発表:JST?創発的研究支援事業研究報告】
◇松前ひろみ[基礎医学系分子生命科学領域講師]
「生物学と人文科学の融合:人類情報学(Anthropological Infomatics)の構築」
【医学部医学科プロジェクト研究<終了報告>】
(将来を嘱望される研究者の主導による創造的かつ先端的な研究に対して2年間助成)
◇後藤信一[総合診療学系総合内科学領域講師]
「AIによる特徴抽出を用いたHFpEFの新規予防治療標的探索」
【医学研究基金<終了報告>】
(医学部研究助成金を受けた研究の中からより発展が期待されるテーマについて3年間助成)
◇津川 仁[基礎医学系生体防御学領域准教授 総合医学研究所所員]
「フロントラインバリアの免疫老化と消化管内Pathobiont細菌の交叉点」
◇吉田 浩[専門診療学系産婦人科学領域准教授]
「卵巣癌早期発見のためのAI血液診断モデルの開発(CSGSA-AI)
―癌関連糖蛋白と網羅的血清糖ペプチドピークデータを用いて―」
【医学部研究助成金(重点的研究)<終了報告>】
(医学関連研究のレベル向上に寄与すると認められる優れた研究を重点的に支援)
◇三浦浩美[基礎医学系分子生命科学領域助教]
「新規インテグラーゼ系を用いた改良型遺伝子改変マウス作製法の最適化と応用」
◇松田陽介[内科学系腎内分泌代謝内科学領域助教]
「大量培養ポドサイトの移植による腎不全の改善と糸球体再生の機序の解明」
◇長谷川政徳[外科学系腎泌尿器科学領域准教授 総合医学研究所所員]
「包括的血清糖ペプチドプロファイル解析による前立腺癌スクリーニング法の構築」
◇大和田裕介[内科学系総合内科学領域助教]
「AIを用いた経胸壁心エコーによる感染性心内膜炎検出」
【講評】
穂積勝人[研究イノベーションセンター所長 基礎医学系生体防御学領域教授]