総合医学研究所が3月14日に伊勢原キャンパスで、「第28回公開研究報告会」を開催しました。本研究所では、専任所員ならびに医学部医学科の教員を兼務する所員らが、基礎医学と臨床医学の有機的融合による疾患の病態解明や新たな診断?治療法の開発、創薬研究を推進し、特にゲノム?再生?創薬に関する顕著な業績を国内外に発信しています。今年度からは、優れた個人研究を本研究所の旗印となる研究に昇華させるため、「オミクス※」「脳神経機能」「感染免疫機能」「再生医学」「病態生理」の5つに研究部門を再編。コアプロジェクトの研究期間の延長や研究費の集中配分、外部評価者の招聘といった制度の充実も図っています。報告会は、所員が1年間の研究成果を共有するため毎年同時期に実施しているもので、今回は6名が発表。医学部医学科の教職員や大学院生、生命科学統合支援室の技術職員ら多数が参加しました。

初めに森正樹所長(副学長?医系担当、医学部長)が、「本学では、これまで以上に研究力の強化を進めており、総医研への期待は高まっています。成果を上げるためには研究者の連携が何よりも大切です。今日は活発に議論し、互いの研究への理解を深めてください」とあいさつ。続く研究報告では、各発表後に今後の展開や臨床への応用などについて活発な意見交換が行われました。
今年度の「コアプロジェクト1」として進めている「ウイルス様エレメント(VE)研究基盤の創設と発展」については、中川草准教授(基礎医学系分子生命科学領域)が報告。さまざまな疾患や炎症への関与が示唆されているVE(ウイルスに由来すると考えられる塩基配列)に関わる研究を推進するために構築した2つのウイルス探索データベース「NeoRdRp」「gEVE」について解説しました。さらに、これらを用いて同定したVEや、その機能の理解や応用を目指すための研究、次年度の計画についても説明。発表後には、オンラインで聴講した外部評価者を務める東京医科歯科大学名誉教授の石野史敏氏が、本研究への期待を語りました。



最後に稲垣豊次長(総合医学研究所特任教授)が、「今年度は新しい方向性を求め、部門の再編やコアプロジェクトの拡充をはじめ、20回の節目となる研修会を第1回と同じ山中湖セミナーハウスを会場として熊本大学と連携して実施するなど、充実した1年でした。今後も皆さんの意見を取り入れながら活性化を図るための取り組みを進め、研究を発展させたいと思います」と結びました。



なお、当日のプログラムは下記のとおりです。
[開会の挨拶]
森 正樹所長(副学長?医系担当、医学部長)
[研究報告]
◇沓澤直賢【感染免疫機能部門】(総合医学研究所助教 マイクロ?ナノ研究開発センター)
「本学発のマイクロ流体デバイスを用いた新たな細胞培養とその評価技術」
◇津川 仁【感染免疫機能部門】(基礎医学系生体防御学領域准教授)
「消化管内細菌由来菌体外膜小胞が起点となる疾患発症の分子メカニズム解明とその予防法開発」
2024年度コアプロジェクト2
◇今西 規【オミクス部門】(基礎医学系分子生命科学領域教授)
「電子カルテ情報分析のためのプラットフォーム構築」
2024年度コアプロジェクト1
◇中川 草【オミクス部門】(基礎医学系分子生命科学領域准教授)
「ウイルス様エレメント(VE)研究基盤の創設と発展
―様々な疾患との関わりと治療法の探索、そして生物進化から次の感染対策まで―」
◇稲垣 豊【再生医学部門】(総合医学研究所特任教授)
「遺伝子改変マウスを用いた疾患病態解明と創薬研究」
◇扇屋大輔【再生医学部門】(内科学系血液?腫瘍内科学領域講師)
「多発性骨髄腫に対する抗CD38抗体療法耐性機序の解明」
[閉会の挨拶]
稲垣 豊次長
※オミクス:生体内に存在する分子全体を網羅的?統合的に研究する学問