医学部医学科の幸谷教授が「日本癌学会女性科学者賞」を受賞しました

医学部医学科基盤診療学系先端医療科学の幸谷愛教授(総合医学研究所 血液?腫瘍学研究部門)がこのほど、「悪性リンパ増殖疾患における腫瘍微小環境形成過程の究明とその制御による治療法開発」により、「日本癌学会女性科学者賞」を受賞。10月1日にパシフィコ横浜で開催された同学会の第81回学術総会で、授与式と受賞講演が行われました。この賞は、一般社団法人日本癌学会が、がん研究を志す女性研究者に目標を示すことを目的として、独自の発想により日本国内で独立したがん研究を展開?継続し、がん化機序の解明、がんの診断?治療?予防方法開発を大きく進める重要な成果を挙げた女性研究者に授与しています。

血液腫瘍内科医として臨床にも携わってきた幸谷教授は、リンパ腫(血液中のリンパ球が腫瘍化する血液がんの一種)の発生機序や病態の解明に従事し、数多くの成果を発表してきました。今年3月には、リンパ腫の発生や悪性化における細胞外小胞(EV)の新規作動メカニズムを解明し、アメリカの科学誌『Cell Metabolism』に論文を掲載。この成果は、脂質をターゲットとして腫瘍の発生や悪性化を抑制する画期的な新規治療法の開発につながると期待され、大きな注目を集めています。受賞講演では座長から、研究成果だけでなく若手研究者の育成にも貢献していると紹介され、研究室の主宰者(PI)としての手腕も高く評価されました。幸谷教授は、「受賞を大変光栄に思います。医学部における診療科横断的な連携や、実験動物研究所との共同研究によって世界に先駆けて作製したNOGマウス(ヒトの生体内に近い環境を模倣したモデルマウス)を用いた研究、生命科学統合支援センターの技術職員による実験サポートなど、充実した研究環境が整っているbet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户だからこそ達成できた成果です。協力してくださった学内外の皆さんに感謝しています」と語ります。

幸谷教授は京都大学医学部を卒業後、臨床を経て同大学院医学研究科博士課程に進み、ノーベル医学?生理学賞を受賞した本庶佑博士の元でリンパ腫を引き起こす遺伝子の研究に従事。2006年2月には1歳半の子どもとともにアメリカに渡り、「Whitehead Institute for Biomedical Research」における2年半にわたる研究などを経て、2011年にテニュアトラック教員として本学に着任しました。以後はPIとして、エプスタイン?バー?ウイルス(EBV)感染により発症するB細胞リンパ腫の病態や悪性化機序の解明、リンパ腫由来の細胞外小胞に含まれる多様な炎症制御性分子の発見といった多くの成果を報告。さらに、希少疾患である劇症型NK細胞白血病の治療標的の同定にも成功し、来年度から医学部付属病院での臨床試験開始が決定しています。

幸谷教授は、「たくさんの研究者の方々が祝福してくれましたが、特に女性研究者からは、子ども連れの留学やテニュアトラック制度への挑戦に対する勇気をたたえるメッセージをいただきました。受賞講演を聞いた女性研究者からラボの見学希望があったことも、とてもうれしく思います。アメリカで研究にも子育てにも思い切り取り組めたのは、当時PIだったハーベイ?ロディッシュ博士の配慮と支援のおかげです。その経験を糧にPIとしての独立を決意し、テニュアトラック制度に応募しました。PIになってからは、子育て中の人はもちろん誰もがそれぞれの持ち味を発揮して独創的な研究ができる環境づくりに努めています。ラボのメンバーは、各自が異なるテーマの研究に集中する一方、互いに刺激し合いながら緩やかに連携しており、それが相乗効果をもたらして新たなブレイクスルーを生み出しているように感じています。がん研究から得られた知見のbet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户研究への応用も、そうした成果の1つです。PIとして折り返し地点にいる今、受賞は次のステージに向けての大きな励みになりました。今後も細胞外小胞と劇症型NK細胞白血病を軸に、“あれもこれも、これからも”の精神で患者さんに役立つ研究を続けていきたい」と意欲を見せています。