医学部医学科内科学系腎内分泌代謝内科学領域の深川雅史教授と駒場大峰准教授(総合医学研究所)が、新潟大学医歯学総合病院の山本卓病院教授らと展開する国際共同研究「Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study」(血液透析の治療方法と患者の予後についての調査=DOPPS)で、登録された血液透析患者28,888名のデータを解析。骨などで作られる酵素「アルカリフォスファターゼ」(ALP)が、血液透析患者の死亡と心血管疾患、骨折に強く関連することを明らかにしました。その成果をまとめた論文は1月10日に、科学誌『Kidney International Reports』オンライン版に掲載されました。
糖尿病や高血圧などを原因とする慢性腎臓病は、進行すると血液透析などの腎代替療法が必要になります。血液透析患者はさまざまな合併症を引き起こし、生命予後が悪いことが知られています。合併症の一つである二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)は、副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰分泌により発症し、死亡や心血管疾患、骨折のリスクを増やすと考えられていますが、血液中のPTH濃度との関連については研究者の見解が一致していません。また、PTHが骨に作用して分泌されるALPは血液透析患者の死亡に影響するとの結果が示されていますが、ALPとPTHの作用とを関連させた調査報告はありませんでした。
本研究では、DOPPSに登録された2005年から21年までの日本人を含む9カ国28,888名のデータを使用し、血液透析患者の血液中のALP値、PTH値と、「すべての要因による死亡」「心血管疾患による死亡」「骨折」との関連を解析。その結果、日本人のALPとPTHの血中濃度は他国と比較して低いことが分かりました。また、ALP値の高さは、低カルシウム血症、低リン血症、SHPTの治療薬「カルシミメティクス」の使用と関連していることも判明。さらに、ALPはPTHに比べて、死亡、心血管疾患、骨折に強く関与することも明らかになりました。
深川教授と駒場准教授は、「本研究により、血液透析を受けてSHPTを発症した患者さんに対しては、PTHだけでなく、ALPをはじめとする骨代謝マーカーを適切に管理することが有益である可能性が示されました。今後は、この方法によって実際に患者さんの予後が改善するかを検証するなど、臨床実践に向けて研究を続けます」と話しています。
※『Kidney International Reports』に掲載された論文は、下記からご覧いただけます。
https://www.kireports.org/article/S2468-0249(24)00002-0/fulltext