「国際協力―シリア事例を中心に開発協力から難民支援まで」をテーマに特別講義を開催しました

政治経済学部政治学科では5月8日に湘南校舎で、JICA緒方研究所専任研究員の武藤亜子氏による特別講義「国際協力―シリア事例を中心に開発協力から難民支援まで」を開催しました。この特別講義は、2022年度から開講している「グローバル?ガバナンス論」の一環で実施したものです。グローバル?ガバナンス論では、政府や国際機関、NGO、企業、専門家などのゲストスピーカーをお招きし、それぞれの立場で地球規模の課題に挑んできた実態について講演していただいております。地域や国境を越えて多様な問題を解決する政治的相互作用について、理論と実態の両面から理解を深めることを目指しています。

武藤氏はJICA職員としてシリアやヨルダンにて開発協力や難民支援の最前線で活躍されたご経験をお持ちでおられます。講義では、まず武藤氏の所属するJICAという組織や活動の紹介がなされました。そしてJICA職員として派遣されたシリアについてのご紹介がありました。紛争地としてのイメージが固定化しているシリアですが、様々な種類の野菜が栽培されており、シリアの人々は豊かな食生活を送っていたことを写真とともに話されました。しかしながら、紛争勃発とともに、シリアに対する開発支援は撤退し、現在まで再開の目途は立っていないそうです。現在、シリアに対して、国内避難民の支援を含め、人道支援が行われていますが、紛争により破壊されたインフラは復旧されないままであり、支援は限られているとのことでした。

また武藤氏が駐在されたヨルダンでの各種支援活動もご紹介くださりました。ヨルダンの若年失業者を減らすために、日本のハローワークに相当する雇用事務所を整備したり、水が不足する地域で配水管を新設したり、戦争体験で心に傷を負った子供たちを支援するために、難民キャンプに人員を派遣したり、といった活動が展開しているそうです。

講演の最後に、武藤氏から学生に対して、「長期化する紛争の最中に、日本はどのような国際協力ができると思いますか」という問いかけがなされました。これに対して、学生からは、人道支援の継続、難民の受け入れ、紛争を終結させるための政治的働きかけ、などが回答として寄せられました。担当教員の小川教授は、「長期化する紛争に対して日本にできることなどあるのだろうかと思いましたが、武藤氏の講演を聞いた学生が想像力を膨らませ、日本の国際協力の可能性を探ってくれたことを喜ばしく思いました」と武藤氏の講演の意義を実感したことを述べていました。