数学科の岩尾講師が「RIMS研究集会2018」で研究代表を務めました

理学部数学科の岩尾慎介講師が、9月5日から7日まで京都大学数理解析研究所で開かれた「RIMS研究集会2018『可積分系理論から見える数理構造とその応用』」でオーガナイザーを務めました。この研究集会は年に一度開催されており、今回は可積分系の理論をキーワードに、常微分方程式論、確率論、組み合わせ論、実解析、応用数理、代数幾何学、微分幾何学など幅広い分野の研究者の情報交換を目的に企画されました。本学科からは岩尾講師のほかに瀧真語准教授と長井秀友講師が参加し、それぞれ専門とする研究分野について講演しました。

岩尾講師は、「超離散KP方程式を用いたYoung盤の組み合わせ論の証明」と題して講演。「数学の一分野である微分方程式の『超離散可積分系』の考え方を、組み合わせ論という全く異なる分野の問題に応用することで、組み合わせ論の新しい定理?証明が得られることを紹介しました。一見複雑に見える問題が、見方を変えることで当たり前の事実に帰着してしまうことが数学の面白さの一つだと思うのですが、そういった考え方を誘発できたらと思い、このテーマで発表しました」と語ります。

代数幾何学を専門とする瀧准教授は、「K3 surfaces and log rational surfaces」をテーマにK3曲面とよばれる代数多様体やその対称性を表す自己同型について詳しく解説し、可積分系の分野にどのように関わるかを説明。また、代数幾何の最新の結果をいくつか紹介しました。瀧准教授は、「数学は自分が専門とする分野以外は詳しい内容がわからないことが多いので、可積分系を専門とする研究者の方々にもK3曲面がどのようなものかわかるよう、入門講義のような内容でお話しました。研究集会では、著名な研究者の方が多く参加されていて、専門分野が異なる方々とお会いできたことは刺激になりました。今回のように横断的な会は非常に価値があるものだと思います」と振り返ります。また、長井講師は「超離散2次元戸田方程式とヤコビ恒等式」と題して講演。可積分系の中でも超離散系を専門に研究する長井講師は、ヤコビ恒等式を用いて離散2次元戸田方程式を解く手法は超離散系においても類似した手法で解けるという研究成果を発表しました。長井講師は、「懇親会では、発表した内容についてほかの研究者からアドバイスをもらえる機会もあり、非常に勉強になりました。毎年参加していますが、今年は特に幅広い話を聞くことができたと感じています」と語りました。

研究集会全体を振り返って岩尾講師は、「数学は紙とペンの世界ではありますが、情報交換や共同研究など、他の研究者との交流はとても重要です。今回は他分野のさまざまな研究者にお会いできる貴重な機会になりました。また、新しい研究成果も多く発表があり、21世紀の数学の大きな動きの一端が見える研究集会だったと思います」と述べています。

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