理学部情報数理学科の那須弘和教授が、12月12日から15日まで韓国大田(テジョン)の基礎科学研究院(Institute for Basic Science)で開催された国際研究集会「Workshop on Classical Algebraic Geometry」で招待講演を行いました。同研究院(IBS)のCENTER FOR COMPLEX GEOMETRY(CCG)が主催する代数幾何学の分野の研究集会で、開催地韓国を中心にイタリア、アメリカ、ポーランド、フランス、中国、日本などから約70名の同分野の研究者が集まりました。
那須教授は、13日に「Obstructions to deforming curves on a Fano threefold and non-reduced components of Hilbert schemes」(ファノ三様体上の曲線の変形障害とヒルベルトスキームの非被約成分)のタイトルで講演を行いました。ヒルベルトスキームは固定された射影スキーム上の閉部分スキーム全体をパラメータづけるパラメータ空間であり、代数幾何学の分野ではモジュライ空間と呼ばれる”図形”の一つです。射影空間やグラスマン多様体の自然な一般化にもなっており、射影的かつ普遍族が存在するなど良い性質が備わっていますが、一方で被約でない既約成分などが存在することがあり(マンフォードの例など)、悪い特異性をもつことも知られています。
那須教授は「今回の集会では3次元射影空間に対するマンフォードの結果をピカール数1の任意の非特異3次元ファノ多様体に拡張した結果について報告しました。講演のスライドを準備してましたが、前日に会場を訪れ黒板が見やすかったので、スライドを用いずに黒板で説明しました。講演中や講演後に聴衆から反応があったので研究の励みになりました」と話します。「今回の集会では韓国のS.Kim教授による空間曲線のヒルベルトスキームについての講演があり、お互いの研究について理解するための良い機会となりました。今後の研究活動のための新しいアイデアが得られただけでなく、韓国や海外の研究者達との交流を楽しみました」と語りました。