観光学部観光学科の本田量久教授によって翻訳されたW?E?B?デュボイス著『平和のための闘い』(ハーベスト社刊)が昨年12月に刊行されました。デュボイス(1868~1963年)は、冷戦対立が深刻化し、アメリカ国内で反共ヒステリーが強まるなか、欧米中心的な世界秩序を支える人種差別?植民地支配?戦争に抗議し、汎アフリカ主義?人種平等?世界平和の実現を訴え続けた黒人社会学者です。原著『In Battle for Peace』は、このような時代背景の1952年に出版されました。
本田教授は、「1990年代後半にデュボイスの著書を読み始めていましたが、2003年3月に始まったアメリカによるイラク攻撃に衝撃を受け、憤慨するとともに、21世紀の戦争を説明する際にもデュボイスの議論は一定の説明力を持つだろうと考え、本書の翻訳をはじめました」と振り返ります。「デュボイスは日本ではあまり知名度が高くはありませんが、19世紀末から20世紀半ばにかけてマルクス主義的な立場から人種差別?植民地支配?戦争などに関する著書を多数執筆し、アメリカでは今日も研究者や学生の間で著作が広く読まれている存在です。本書の翻訳にあたっては、訳注を作成するためにマサチューセッツ大学デュボイス図書館で資料収集を重ねるなど15年もの歳月を要しましたが、デュボイスによる社会学的研究の学術的?社会的意義を正当に評価する方々から激励をいただき、デュボイス生誕150年にあたる2018年に刊行することができました。今後も民主主義と平和に向けて闘い続けたデュボイスの知の遺産を社会に発信し、後世に伝える仕事を続けていきたい」と話しています。