観光学部長の藤本祐司教授が編著者の一人として携わった、『福祉国家の観光開発 北欧の新産業戦略と日本』(2018年7月、彩流社刊)が刊行されています。同書は、「休まぬ者、働くべからず」として知られる北欧諸国の「ユニークなツーリズム戦略」や「ヒトの暮らしの保障としての観光」から、近年国内で求められている「働き方改革」のヒントを見出すことを目的としています。藤本学部長とともに東洋大学国際学部教授の藪長千乃氏が編著者を務め、早稲田大学名誉教授の岡澤憲芙氏や本学文化社会学部北欧学科の柴山由理子講師ら7名の研究者が各章やコラムを執筆しました。
観光政策や地域政策、地域観光マネジメントが専門の藤本教授は、書籍全体の編集とともに終章『観光立国から真の観光大国へ――「休暇改革」と「訪日外客誘致策の転換」の執筆を担当しました。「本書は執筆者の一人で、スウェーデン社会研究所長なども務められていた早大の岡澤先生の大学院博士課程ゼミで学んだ研究者が集い、スウェーデンやフィンランド、デンマーク、アイスランドといった北欧諸国の福祉や観光政策、グローバル社会における戦略などについて専門家の視点から論じています。私が執筆した終章ではこれらの事象を受けて、日本国内の事象を紹介しました」と話します。藤本教授は日本における観光政策の変遷から、地域活性化策として用いられてきた観光のあり方、訪日外客数の増加などについてデータを用いながら紹介。また、日本人の有給休暇取得率が北欧諸国と比較して低く、取得する時季も偏重していると指摘し、有給休暇取得の促進や休暇集中の緩和について「働き方改革が議論される今、休み方改革も同時に議論されることを期待している」と提言しました。
藤本教授は、「政府による観光政策の推進などで、訪日外客数は急増していますが、日本人は休暇取得の壁やその気質から特に社会を支える現役世代が“仕事を休んで旅行をしよう”という考えをまだ持てていません。観光には本学の掲げる『社会のQOL向上』にもつながる健康寿命を延ばす効果もあり、日本人はもっと旅行に行ける環境をつくっていくべきだと考えます。本書はいわゆる学術書ですが、一般の方にもわかりやすく、やわらかい言葉を選んで書かれています。ぜひ多くの方に読んでいただき、自らの生活を豊かにするためのヒントを得てもえれば」と話しています。