大学院工学研究科の学生2名が日本建築学会大会学術講演会で若手優秀発表賞を受賞しました

大学院工学研究科建築土木工学専攻1年次生の荒石菜々美さんと生島駿大さんが、昨年8月28日から30日まで行われた2024年度日本建築学会大会学術講演会に参加。このほど審査結果が発表され、荒石さんが建築歴史?意匠部門で、生島さんが都市計画部門で、それぞれ若手優秀発表賞を受賞しました。

荒石さんの研究テーマは「小田原市?国府津別荘地の形成過程とその特質」です。かつて交通の要衝として栄えた神奈川県国府津町(現?小田原市国府津など)は、最盛期には約40件の別荘が存在し、名産の蜜柑畑と海を見渡せる景観が魅力とされていましたが、関東大震災の被害や交通網の整備によって別荘地は近隣の小田原市や大磯町に移っていきました。国府津地区出身の荒石さんは、「教育者で政治家の高田早苗の別荘が近所にあり、別荘地であったことは幼いころから知っていました。小田原と大磯に挟まれてあまり知られていない国府津について知ってほしいという思いと、近代別荘地の研究に重要な役割を果たすという思いから、小沢朝江教授の研究室でこのテーマについて取り組むことにしました」と振り返ります。土地台帳や日記、伝記などを調べて国府津町における別荘地の歴史をまとめる中で、「本邸から別荘へ庭の木や石、茶室などを移し、隠居生活を送るために人々が移り住んだといった物や人の移動に興味がわきました。今後は別荘所有者らの調査を進めていきたい」と意欲を見せています。

後藤純准教授の研究室で都市計画について学ぶ生島さんは、「オーバーツーリズム対策としての分散型観光の現状と課題―神奈川県鎌倉市鎌倉地域?大船地域を事例に―」をテーマに研究してきました。インバウンド観光の振興によって全国的に来日観光客が増えている昨今、神奈川県鎌倉市をフィールドに、観光客を一極集中させない分散型観光の現状を調査。現地を訪れて、住民が困っていることや分散型観光に向けた取り組みついて聞き取りし、「地元住民からは、あまり知られていない地域の憩いの場に観光客が入ってくることを懸念する声があった一方、事業者からは観光客増加を歓迎する声が聞かれました」と振り返ります。鎌倉市観光協会のSNSを分析して観光地になり得る場所をまとめた地図も作成し、現状と課題を指摘しました。「都市計画は観光学とは異なり、住民の生活に寄り添った研究です。今回の調査で現状と課題が見えてきたので、住民、事業者、観光客の意見が調和した解決策を考えるとともに、他の地域にも生かせるモデル事例をつくりたい」と語りました。