
情報技術センター(TRIC)が今年度に開設50周年を迎え、9月14日に品川キャンパスで記念行事を開催しました。TRICは、衛星リモートセンシングをはじめ、地球観測や画像技術の先端研究を展開し、大学の研究成果の高度利用を目指す研究機関として1974年に開設。現在は、学内外の研究機関や行政、企業と連携しながら画像情報分野を中心に幅広い研究のほか人材育成にも取り組んでいます。
約130名が出席した当日は、まず第1部として情報技術センター研究報告会を開催。中島孝所長(情報理工学部教授)のあいさつに続いて、TRIC所員を兼務する教員らが2023年度に取り組んできた移動体ナビゲーションや災害のソーシャルメディア利活用、コンピュータ筆跡鑑定などについて成果を披露しました※。
第2部の開設50周年記念行事では、冒頭に司会の竹村憲太郎TRIC次長(情報理工学部教授)が、TRIC初代所長を務めた松前達郎総長が9月8日に逝去され、所員一同で黙とうを捧げた経緯を説明しました。続いて、松前義昭理事長?学長によるあいさつの動画を上映。松前理事長は、自らも1987年度から所員として所属したTRIC設立の経緯や研究活動などを回顧し、「89年に開かれた横浜博覧会で、MMCコーヒー『地球体験館』のパビリオンの設計から運営まですべてに携わったことが記憶に残っています。また、JAXA、RESTEC、キヤノン電子などとの共同作業や委託研究、法隆寺金堂壁画復元なども経験してきました。これは歴代の教職員の努力で素晴らしいシステムを構築してきたからこその成果です。あらためて関係する企業、公的機関の皆さまに感謝申し上げます」と語りました。


次にTRIC前所長の長幸平特任教授が活動沿革を紹介。74年の設立から、81年のランドサットマップ開発や86年の宇宙情報センター設立、翌87年に打ち上げられた地球観測衛星MOS-1のデータ受信、92年に実施した漂流ブイによる太平洋のごみの追跡、95年の阪神?淡路大震災後の取り組みなど多彩な活動を振り返り、「松前達郎総長と共に創設に携わった坂田俊文先生と下田陽久先生のお二人の高い志と行動力がTRICの研究を発展させてきました」とTRICの活動における中心を担った故?坂田名誉教授、故?下田名誉教授の功績をたたえました。また、続いて登壇した中島所長は近年の活動について説明。「今年度は、17名の教員研究員のほか4名の技術員が18の研究テーマを設定して取り組んでおり、規模に見合った研究成果が得られ順調に運営しています。地球環境や視聴覚、安全安心、古文化財遺跡調査などキーワードにした活動のほか、新機軸としてIT農業、画像認識によるロボット制御等、に関する研究が始まっています」と語りました。


さらに、来賓の宇宙航空研究開発機構?地球観測研究センター長の沖理子氏、リモート?センシング技術センター理事長の池田要氏、キヤノン電子株式会社代表取締役会長の酒巻久氏によるあいさつの後は、宇宙飛行士で日本科学未来館名誉館長である毛利衛氏による特別講演「地球観測からの未来智」を行い、終了後には来場者から多数の質問が寄せられ、毛利氏が一つひとつ丁寧に回答しました。


会場を学生食堂「コメドール」に移した第3部では、虎谷充浩教授(TRIC?建築都市学部)の進行で、交流会と共に「坂田俊文先生思い出の会」も実施。TRICの事務職員として坂田教授の活動をサポートした鈴木清恵さん、坂田教授の教え子で月刊誌『写真工業』の編集長を務めた工学部卒業生の市川泰憲さんが登壇。鈴木さんは坂田教授の人柄や取り組んできた多彩な研究活動を、市川さんは「画像」というキーワードを軸に画像処理技術のみならず仏像や考古学といった坂田教授の幅広い分野にわたる多彩な研究を振り返り、参加者が熱心に聞き入る様子が見られました。


第1部情報技術センター研究報告会
司会:内田理教授(情報技術センター?情報理工学部)
開会あいさつ:中島孝教授(情報技術センター所長?情報理工学部)
「抽象情報に基づく移動体ナビゲーションに関する研究」
村松聡准教授(情報技術センター?情報理工学部)
「災害?非常時におけるソーシャルメディア利活用に関する研究」
宇津圭祐准教授(情報技術センター?情報理工学部)
「コンピュータ筆跡鑑定に関する研究」
福江潔也客員教授(情報技術センター)
「脳-AI接続系の構築に向けた視聴覚刺激による脳活動制御技術の開発」
倉重宏樹講師(情報技術センター?情報通信学部)
「気象衛星?地球観測衛星によるリモートセンシングを応用した水災害対応技術の開発」
白水元助教(情報技術センター?建築都市学部)