海洋学部の秋山教授と海洋研究所の鈴村特定助教らの研究グループが日本水産学会論文賞を受賞しました

海洋学部水産学科の秋山信彦教授と海洋研究所の鈴村優太特定助教らの研究グループが日本水産学会論文賞を受賞し、3月27日に北里大学相模原キャンパスで開かれた日本水産学会春季大会で賞状が授与されました。同学会が発行する論文誌『Fisheries Science』『日本水産学会誌』に掲載された論文の中から特に優れたものが選出されます。秋山教授らは、たこ焼き店「築地銀だこ」を展開する株式会社ホットランドホールディングスと東北大学、宮城大学が東日本大震災の復興支援を目的に取り組むマダコの養殖研究に2011年から協力しており、陸上養殖方法の開発を担当。国立研究開発法人科学技術振興機構による「A-STEP企業主導フェーズNexTEP-Aタイプ」の支援を受け、秋山教授と鈴村特定助教、研究室の学生らが静岡キャンパスの養殖研究施設で研究に取り組んでいます。鈴村特定助教は、大学院地球環境科学研究科(博士課程)在籍時から中心的役割を担っており、23年度にも筆頭著者となった論文が同賞に選出されています。

今回受賞した論文「Efficacy of octopus feed encased within a collagen membrane(コラーゲンケーシングを用いたマダコ用育成飼料の有効性)」は、マダコの陸上養殖において、食べやすい飼料の形状を検証した成果をまとめました。育成用の新しい飼料として魚介類や甲殻類の練り物を与えた際に、水中で散らばってしまったことから、ソーセージを作る際に使用されるコラーゲンケーシングを活用。肉を詰める要領で練り物を入れてマダコに与えたところ中身を食べることができ、飼料としての有用性を証明しました。また、カニや二枚貝を好んで食すマダコは、体からタンパク質を消化する酵素を注ぐことで外殻を壊すことなく中身を吸い上げて食べるとされてきましたが、過去の調査事例が少ないことから検証も実施。カニやケーシング入りの練り物など、食べている途中の飼料を取り上げて分析し、マダコ由来の酵素が検出されたため科学的根拠を示しました。

鈴村特定助教は、「マダコの知能の高さに関する研究論文は海外に多くありますが、生産や養殖、飼料に関する研究は比較的少なく、今回の検証結果には大きな意味があると思います。私は生き物の飼育を得意としていますが文章作成などは苦手なので、共同研究者の先生方にご協力いただいたおかげで論文を作り上げることができました。水産学研究の進展に少しでも役立てられればうれしい」と話しました。秋山教授は、「この研究が進んでいる最も大きな要因は、蛇口をひねれば地下海水が出てくる静岡キャンパスの飼育環境があってこそ。毎日研究室の学生たちが授業や就職活動と並行してマダコを世話し、細かいノウハウも蓄積してきています。今後も養殖技術の確立に向けて取り組んでいきたい」と話しています。