国際教育センターと工学部原子力工学科では3月28日から30日まで、原子力開発にかかわる技術者や学生を対象とした短期研修「IAEA講師による原子力の国際安全基準コース」を開講しました。国際原子力機関(IEAE)が定める国際基準を習得する機会として2013年度から実施しているものです。昨年度までは、文部科学省「平成25年度原子力人材育成等推進事業補助金」に採択された本学のプログラム「原子力国際基準等を基盤とした多層的な国際人材育成」の一環として行ってきましたが、今回からは本学独自のプログラムとして開講し、約60名が受講しました。
期間中は、IAEAの定めた基本安全原則と緊急事態への対応、地震や気象などの影響を考慮した原子力施設立地の選定方法、苛烈事故への対応プログラムなどについて、IAEA原子力安全?セキュリティ局のドミニク?デラットレ氏をヘッドする5人のIAEAの専門家が講義しました。最終日には国際教育センターの広瀬研吉教授が「原子力の国際的枠組み」と題して講義。原子力発電施設建設と運用に必要となる政策決定から運用開始までのインフラ整備と、核兵器不拡散の国際的な枠組みの歴史と今後の課題などを紹介しました。
閉講式でドミニク氏は、「このプログラムを行うのは今回で4回目ですが、受講生も積極的に質問するなど大変大きな成果を収めることができたと思う。今後の仕事に生かしてほしい」とコメント。参加者からは、「IAEAの最新の基準や議論の状況について、第一線の専門家から学べる充実した内容だった」「原子力分野で働く者にとっては必要な知識ばかりだった。説明も分かりやすく、今後も職場から社員を派遣したい」といった感想が聞かれました。
広瀬教授は、「東日本大震災以後、日本でも原子力発電所を国際基準に沿って管理することが求められるなどプログラムのニーズは高まっています。学生たちには、国際機関の最前線で働く人たちと接する良い機会にもなりました。この経験をもとに、彼ら自身が自らも国際機関で働きたいという意欲を持ってもらえれば」と話しています。また原子力工学科主任の伊藤敦教授は、「独自のプログラムとして実施するにあたっては、過去の参加者から集めたアンケート結果をもとに内容を見直し、IAEAの基準を網羅的に学べるような内容にしました。年を重ねるごとに授業の進め方なども洗練されてきています。日本で初めて原子力工学を専門する教育課程を設けた大学として、この研修を継続していきたい」と語っています。