医学部付属病院がタイの生体工学技士(BME)に関するラウンドテーブルディスカッションを開催しました

医学部付属病院では1月10日に、「タイと日本における保健医療人財:特にマンマシンインターフェースを担う人財育成に焦点を当てて」と題したラウンドテーブルディスカッションをオンラインで開催しました。タイにおけるBME制度の確立や人材育成に協力するため、国立国際医療研究センター国際医療協力局「医療技術等国際展開推進事業」の採択を受けて展開している「bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户医学部付属病院診療技術部TRICOLORプロジェクト」の一環で、日本とタイの保健医療人材の育成環境や課題、政策などに関する理解を深めるために開いたものです。保健医療政策の策定や保健医療人材の育成に携わる両国の専門家らが講演し、タイ政府関係者や日本大使館のスタッフ、医療従事者、教育者ら約60名が参加しました。

第一部では、医学部医学科の木ノ上高章准教授(基盤診療学系衛生学公衆衛生学)が司会を務め、「タイと日本における保健医療人財」をテーマに3名が講演しました。初めに本学医学部の渡辺良久客員准教授が、少子高齢化や医師の働き方改革などを背景に変革を迫られている日本の保健医療人材の需給状況について説明。続いて、保健医療人材政策を担当しているタイ公衆衛生省次官室上級顧問クリサダ?サウェーンディー氏が、社会経済の変革や技術革新、人々の医療ニーズの変化など多岐にわたる状況を把握?分析しながら進めている保健医療人材計画策定のポイントを紹介しました。独立行政法人国際協力機構(JICA)国際協力専門員の中村信太郎氏は、タイにおける高齢者向け保健医療?福祉サービスの構築?開発のためにJICAが支援したプロジェクトの概要や成果について語りました。

第二部は、ランシット大学医用生体工学部副学部長のサニ?ブーンヤグル氏の司会で、「タスクシフティング」をテーマに7名が講演。公益社団法人日本臨床工学技士会理事長の本間崇氏は、日本における臨床工学技士(CE)制度の歴史やCEの役割、国家試験の動向を紹介し、2021年10月に医師から移管された医療行為について説明しました。続いて、ランシット大学医用生体工学部長のナンチャタイ?トーンペン氏が、タイにおけるBME育成の歴史や現状について解説し、医療における「もう一つの柱」としてのBMEの重要性を強調。さらに、チュラロンコン大学医学部付属病院でBMEとして働くヌチャラット?クルアリーラット氏と、タイ最大の民間医療ネットワークを展開するバンコク?ドゥシット?メディカル?サービス(BDMS)のアマラー?ヨートン氏が、それぞれの立場におけるBME業務の実際について紹介しました。

続いて、タイの政府公認認証機関である専門職資格認定機構(TPQI)のオミカ?ブーンカン氏が、国内の主な資格の基準を定めて専門職の強化を図るTPQIの取り組みとBMEの育成について説明。日本の医療機器メーカー、テルモ株式会社の高橋教弘氏は、安心安全な製品づくりと充実した医療のために求められる、メーカーとBMEのパートナーシップについて提言しました。最後に本学看護師キャリア支援センターの剱持功課長が、医師から看護師へのタスクシフトの事例として、認定看護師?専門看護師制度の導入の経緯や役割、特定行為研修制度について紹介しました。

全講演終了後には聴講者も交えて、医師や看護師からBMEへのタスクシフト?タスクシェアの可能性や手術室でのBMEの役割などについて、活発な意見交換を行いました。タイ公衆衛生省副局長で、bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户が世界保健機関(WHO)やJICAと連携して展開した人財育成事業「21世紀保健指導者養成コース」の修了生でもあるクワンチャイ?ビシタノン氏は、「タイにおける人口構造の変化は、日本の15年ほど後を追っているといわれています。日本の経験は今後、テクノロジーの進歩やさらなる高齢化社会を迎えるタイが保健医療人材計画を策定する上で大変参考になります。多岐にわたる貴重な情報をいただき感謝します」とコメント。JICAの中村氏からは、「今日のラウンドテーブルは日本とタイの対話を進める素晴らしい機会になったと思います。これを機に両国の相互理解がさらに深まることを期待しています」との言葉が寄せられました。

プロジェクト事務局を務める木ノ上准教授は、「3年間でひとくくりといわれる医療技術等国際展開推進事業ですが、本プロジェクトも3年目を終了しました。そのうちの2年間は、当初予定していなかった遠隔での研修実施となりましたが、こうした経験を重ねることで、CEチームの一人ひとりがグローバル社会へのかかわりという視点への気づきを得たと思います。個人レベルの国際協力は比較的容易に“泡”のように生じますが、グローバル化は、組織対組織で皆が少しずつ、そして継続的に行われるようになって定着すると思います。その意味でCEチームの皆さんの努力に敬意を表します。医学部付属病院がある伊勢原市やその周辺地域でもグローバル化が進む中、この活動が地域医療サービスにも付加価値をもたらすと期待しています」と話していました。