国際教育センターと工学部原子力工学科では10月16日から18日まで高輪キャンパスで、原子力関連企業の社員や規制機関の職員、原子力工学を学ぶ学生を対象とした短期研修プログラム「IAEA講師による原子力の国際安全基準研修コース」を実施しました。IAEAと本学が今年4月に締結した「原子力安全教育分野における実施協定」に基づいて開講したもので、約40名が受講しました。
期間中は、IAEAの定めた国際的な安全原則や緊急事態への対応手順、地震や気象などの影響を考慮した原子力施設立地の選定方法、苛烈事故への対応プログラムなどについて、IAEA原子力安全?セキュリティ局のドミニク?デラットレ氏をはじめとする5名の専門家が講義。2011年に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて再整備が進んでいる最新の安全管理基準や対策について、その全体像を紹介しました。また最終日には国際教育センターの広瀬研吉教授が「原子力の国際的枠組み」と題して講義。17年に国連で採択された核兵器禁止条約をはじめとする核不拡散の枠組みや概要、世界各地で結ばれている非核地域条約の歴史、国際的な原子力損害賠償制度の概要などを紹介しました。
受講生からは、「今後業務で原子力の安全に関する研究に携わることになるため、上司からの勧めで参加しました。IAEAの考える安全基準について網羅的に知ることができ、今後自分で学んでいくための基盤ができたと感じています」といった声が聞かれました。
本センターの山本佳男所長は、「本プログラムは13年に文部科学省の支援を受けてスタートし、これまで4年間にわたって展開してきました。今年度からはIAEAとの協定に基づく独自のプログラムなったことで、両機関による連携のあらたな一歩になったと感じています。現在、安全基準に関する教科書の整備を進めており、来年度にはアジア各国の技術者を対象に医療分野を含めた放射線全般にかかわる安全基準研修コースも開講する予定です。本学は1956年に日本の大学で初めて原子力専門課程(工学部応用理学科原子力工学専攻、現?原子力工学科)を開設した大学であり、今後もIAEAとの緊密に連携し、アジア地域を中心に放射線安全の中核を担う人材の育成に力を入れていきたい」と話しています。