工学部の黒田講師らの研究グループが難治性原虫病のワクチンを作製しました

工学部生命化学科の黒田泰弘講師と国立大学法人帯広畜産大学原虫病研究センターの西川 義文准教授らの研究グループがこのほど、マラリア原虫とトキソプラズマの感染を制御可能なワクチンの作製に成功しました。単一の真核細胞で構成される原虫はヒトを含めたさまざまな哺乳動物に感染し、重篤な症状を引き起こすものが存在します。ヒトに感染するマラリア原虫もそのひとつです。2010年のマラリア患者数はアフリカを中心に約2億1600万人に上り、推定655,000人が死亡しています(2011年 世界マラリア?レポート)。また、トキソプラズマは先進国でも感染が確認されており、世界人口の30?60%が感染していると報告されています。特に妊婦への感染は日本でも問題となっています。これら原虫の感染に伴う疾患は、医学、獣医?公衆衛生領域で重要視されているにもかかわらず、いまだ有効なワクチンが確立されていません。

これまでのワクチンは生きた病原体あるいは死滅させた病原体を使用して作製されてきましたが、安全性や効果が不十分でした。そこで本研究グループでは、病原体の一成分を利用したサブユニットワクチンに着目。免疫細胞(特にマクロファージや樹状細胞)の受容体に対するリガンド(オリゴ糖)と脂質で作製したカプセル(リポソーム)の中に、原虫由来成分を封入した新しいタイプのワクチンを開発しました(OMLワクチン)。このワクチンにより生体に対する安全性を高め、免疫反応を効率的かつ強力に誘導することが可能となりました。

OMLワクチンは、マウスの実験モデルでマラリア原虫とトキソプラズマの感染を予防する効果が確認されたことから、今後のワクチン開発の実用化につながる成果といえます。さらなる研究により、これら原虫病の予防ワクチンの実用化を達成することで人類の健康に大きく貢献することが期待されます。なおこの研究は、最先端?次世代研究開発支援プログラム(内閣府)の支援のもと、帯広畜産大学とbet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户において共同で実施。研究成果は、第83回日本寄生虫学会と米国科学誌に報告しています。