マイクロ?ナノ研究開発センターの教員が日本医工ものづくりコモンズシンポジウムで講演しました

マイクロ?ナノ研究開発センターに所属する研究者が、11月23日にオンラインで開催された一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ主催のシンポジウム「ナノテクの医療応用」で講演しました。同団体は、医学系と工学系の学会の連携により医療現場とものづくり現場とを融合するプラットフォームの形成を目的として2009年に設立され、各種講演会やシンポジウムの開催、大学と企業などとのマッチングに取り組んでいます。今回は、コンピューター外科学会大会の「特別シンポジウム」として実施されたもので、谷下一夫理事長(日本医工ものづくりコモンズ)と本センターの喜多理王所長が座長を務め、岡村陽介准教授(工学部応用化学科)と樺山一哉准教授(大阪大学理学研究科化学専攻)、木村啓志准教授(工学部機械工学科)が講演しました。

最初に喜多所長が、本センター設立の経緯や産学連携による活動の成果を説明。ニコンインステックとの協力によりイメージング研究センターの設立が実現し、岡村准教授を中心としてセンターで培った高分子ナノ薄膜の技術をもとにして大学発ベンチャーである株式会社チューンを設立したことなどを紹介しました。続いて岡村准教授が、高分子ナノ薄膜研究の現状を解説。さまざまな厚さの膜を短時間で作成できる技術や接着剤を使わなくても肌などに密着するという特性を生かし、傷口のラッピングや骨の再生促進への応用に向けた研究を続けているほか、顕微鏡観察時のカバーガラスの代わりに使うことで従来不可能だった生体組織の長時間観察を可能にしているといった成果を説明しました。

樺山准教授は、がんの放射線治療に関する研究を紹介。がん細胞に特異的に発現する物質をターゲットにした抗体医薬を開発し、外科的な治療では取り切れないがん細胞の根治やイメージング技術と組み合わせた治療法の開発について語りました。また、木村准教授はさまざまな臓器の働きを模倣できる「マイクロ流体デバイス(MPS)」に関する研究を紹介。肝臓や小腸といった複数の臓器の働きを組み合わせたモデルや、精巣や受精卵の培養モデルの開発を手掛けているほか、株式会社ニコンと共同で分析機器「BioStation CT for MPS」を開発し、研究用分析機器で広く使われている「96穴プレート」のサイズに合わせたデバイスの多臓器MPSの研究も進めていることなどについて語りました。

座長を務めた谷下理事長からは、「科学に欠かせない基盤研究を進めながら、同時に応用を見据えた研究開発が行われており、まだまだポテンシャルがあると感じた。医工連携の重要性をあらためて感じる講演会だった」とのコメントが寄せられました。