ヨーロッパ学術センター(TUEC)の堀真奈美所長(健康学部教授)が5月24日に、デンマークのオーフス大学で開催された「現代日本社会研究学会(Nordic Association for the Study of Contemporary Japanese Society 2024 Conference)」の基調講演者の一人として招かれ、「超高齢社会における医療改革(Reforming Japan’s Health Care Policy for a Super-Aging Society)」について報告しました。
日本の少子高齢化の現状ならびに医療制度における課題を述べた上で、「高齢者が増えることそのものは『長寿』の言葉が示すように、必ずしもネガティブなことではありません。ヘルシーエイジング社会を構築することが重要です。制度としては、負担と給付の不均衡を拡大させる人口構造の変化にどう対応するか、医療?介護分野の人材確保をどのようにするのかが課題。新しいテクノロジー、イノベーションの実装、コミュニティーの役割がより重要になるでしょう」と述べました。会場からは多数の質問やコメントがあり、「日本の合計特殊出生率の低さ、特に東京の低さに驚きました」という声や、「東南アジアから日本への看護師等の人材派遣に関する調査研究では、日本で看護師等を経験しても2年で戻ってくる人が多いことが明らかになっています。異文化理解などカルチャー面で課題があるのではないでしょうか」「地球の持続可能性という視点で考えると、病院や施設に長期間入所するとより多くのエネルギーを使用することになるのではないでしょうか」、「障がい者や高齢者が共に暮らす『Share金沢』のように、地域レベルでの異世代交流や共生の取り組みについてもっと知りたい」という声が挙がるなど、活発な議論が展開されました。
その後、堀所長は同じオーフス市内にあるVIA大学カレッジ付属の研究所を訪問しました。VIA大学カレッジは、看護師、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカーなど多様な医療?介護系の専門職を養成している組織ですが、研究所では、VRなど新たなデジタルテクノロジーを積極的に教育?研究に活用しています。研究所の名称が組織再編で変更になったことにともない、医療分野のみならず、社会的な領域にも守備範囲が広がったといった説明を受けました。
堀所長は、「オーフス大での講演でも述べましたが、新しいテクノロジーをどのように実装していくかと同時に、コミュニティーや社会環境が重要になってくるので、本学健康学部との連携もさらに深化していくことができるのではないか」と述べました。