大学院工学研究科建築土木工学専攻(建築学領域)では、2月13日に湘南キャンパスで「2024秋学期 修士設計発表会」を開催しました。本領域では、都市や空間認識に関する研究とその設計への応用、都市計画や歴史的建造物とその保存活用といった幅広い調査研究の成果として、修士設計に取り組んでいます。当日は、岩崎克也教授(建築都市学部長)、河内一泰准教授、野口直人講師の研究室で学ぶ大学院生16名が、設計?制作した作品についてプレゼンテーションし、教員らが審査?講評しました。



大学院生たちは東京?代官山、神奈川の浦賀や横浜、熊本?人吉など多様なフィールドを選び、緻密に作り上げた大きな模型やポスターパネルなどを用いて、コンセプトや狙い、設計へのこだわりなどをプレゼンテーション。それぞれの発表後には本学科の教員と外部審査員が次々と質問を投げかけました。大学院生たちは懸命に応答しました。審査の結果、富張颯斗さん(指導教員=野口講師)の作品「小山の2000mの建具―建具でまちをデザインする―」が「MD賞」に、「レモン画翠出展作品+審査員特別賞」には大石真輝さん(指導教員=岩崎教授)の作品「境界線を穿つ―商住間の段階的活動を促す『境界空間』の構築?法―」が選ばれました。



富張さんの作品は、熊本県阿蘇市折戸地区の商店街をフィールドに、各店舗の開口部を「折戸」にして街並みに表情を持たせることで人を呼び込み、活性化を目指すプランです。審査員からは、「開口部という小さなものから都市計画を考える点が新鮮」「このプランを元に地元の人たちと議論すれば、今後のまちづくりにつながる可能性がある」といった評価がありました。富張さんは、「後輩たちにも関わってもらい、現地で合宿して地元の人たちから話を聞くなど一年かけて取り組んできました。さらにディテールをつめるなどして、よりよい商店街の実現につなげられれば」と目を輝かせました。
一方、大石さんの作品は東京?代官山に設計する空間がひだ状に連続する商業施設の計画です。「授業での調査を通して興味を持ち続けてきた代官山に、豊かな境界空間をつくりたいと考えました。今回の経験を生かし、社会人になってからも研究室のテーマである“建築から都市を、都市から建築を”の視点を忘れず設計に携わっていきたい」と抱負を話しました。



最後に外部審査員の羽鳥達也氏(日建設計 設計グループ代表)が、「社会に出て多くの建築家の中でイニシアティブをとっていくのは並大抵なことではありません。未だ実現していない建築物を実現していくために大切なのは、問題の確信を掴むまでいたずらに手を動かさず、言葉の意味も厳密にすることです。今日の模型の出来栄えは素晴らしかったのですが、皆さんはもっともっとできます。これからもこのパワーを忘れず、作りたいものを形にしてほしい」と講評しました。