学科教員リレーエッセイ?羽生浩一教授「現場主義で行こう!~ゼミナールの取材研修旅行」

広報メディア学科では、ゼミナール科目履修は学生の自由選択となっています。
その分、モチベーションのある学生が集まり、教員によって内容が異なるテーマや方法論を通して、深く学ぶことができるようになっています。
今回は、私が担当するゼミナールで実施してきた取材研修旅行について紹介いたします。

私は研究?教育者としての経歴をスタートする前に、放送局の報道ディレクターとしての経歴もあることから、現在はジャーナリズム論やメディア論、平和学などに関連したテーマを念頭に、担当する授業を構成?展開しています。そのなかでゼミナール科目については、長年にわたって、ジャーナリズムやメディア業界を志向する学生たちを、実践学習や個人研究を通して育てて来ました。
卒業生の進路は、新聞社や通信社の記者、制作会社のディレクター、放送局のカメラマンや、地方公務員、一般企業など多種多様です。
2012年度以降ほぼ毎年、春学期でジャーナリズムに関連することを学んだうえで、秋学期の後半に数日間の校外取材研修旅行を参加必須の実践学習として行い、卒業後の学生の進路について深く具体的に学び、考える機会としています。
学生が立派に独り立ちするには、これを2周、つまり3?4年時の2年間が必要だと思います。

沖縄にて戦火を免れたガジュマルの老木
共同通信社那覇支局長にインタビュー
辺野古埋め立ての土砂運搬の現場を取材

これまで実施した取材研修旅行先は、マレーシア(1回)、台湾(3回)、沖縄(5回)で、コロナ禍がはじまる2019年度までは、台湾と沖縄で隔年ごとに実施していました。
最近では、昨年12月に沖縄において3泊4日で実施しました。参加した学生は、自分のテーマに基づいて情報取材や人物を選んでロングインタビューを行い、現在は長編の記事をまとめているところです。
沖縄での研修は、著名なブロガーなどがインターネット上で流布する情報の嘘や偏見、誤解について検証し、まだ知られていない情報や証言を掘り起こし、地元と本土の間に横たわる問題を多角的な視点からより深く理解する機会になっています。
学生たちは、現場に入らなければ知りえない、分かりえないことがあることに気づくのです。

台湾にて淡水訪問
台北 日本語世代の交流会を取材

私がゼミナールの活動で特に重視するのが「現場主義」です。情報は書籍や記事、インターネット上のあらゆる記事やブログなどであふれかえっていますが、ひとが必要とする情報は、常に<人間>の日々の営みから作られています。どんなに情報化社会、そしてあらゆる現場でAI化が進んでいくとしても、一次情報は生身の<人間>が関わりあうことで、生成されていくものなのだと思います。

ジャーナリズムやさまざまなメディア産業で将来活躍したい若者にとって、他者によって生み出され、加工された情報だけに触れるばかりではなく、まだ世に出ていない情報を手探りで、自分の足で現場を歩き回って得ていく実体験を通して、信頼される良質で正確な情報を生み出すための素養が培われていくのだと、私は考えます。
そしてその結実としての記事があり、発信すべき情報があるということを、このゼミナールでの学びを通して確信し、将来の<メディア人>としての基礎を固めてもらいたいと願っています。

台北 人権週間イベントを取材