文化社会学部北欧学科では10月18日に湘南キャンパスで、「知のコスモス」講演会「『共生社会』について考えてみよう―スウェーデンの現状と高島平団地での取り組み―」を開催しました。本学科と総合社会科学研究所、東京都健康長寿医療センター研究所との共催として行ったものです。スウェーデンで「移民のためのアート活動プロジェクト」のリーダーを務めるアンナ?エールランソン氏とレーナ?リンデル氏、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所の宮前史子氏が登壇し、学生や教職員、一般市民ら約30名が聴講しました。この講演会は宮前氏および司会?通訳を務めた北欧学科の上倉あゆ子准教授の企画によるものです。
初めに、「スーデルテリエ市における多文化化の状況と、アート活動による移民支援プログラムについて」と題して、エールランソン氏とリンデル氏が登壇。スウェーデン?スーデルテリエ市の人口約10万人のうち、59%の住民が外国にルーツを持つことを説明したエールランソン氏は、「大半がアラビア語話者で、アラビア語だけでも生活できてしまうというスーデルテリエの中に2つの社会ができています」と現状を語り、リンデル氏は、「多くの人は戦争や逃避行の経験があり、精神的にいい状況とは限りません。移民を対象とする私たちの活動では、アート活動を通して心身ともに健康になってもらうことを意識しています」と話しました。2名は写真とともに日ごろの活動を紹介し、「違うルーツを持つ者同士が互いを受け入れ合うことと、参加者がスウェーデン社会の一員だと感じられることが重要です。“どのような経験をしてきたか”“自分は何がしたいか”といった自分自身について参加者に語ってもらい、絵画や造形、演劇といったアート活動などで、自身を表現できる方法を獲得しています」と話しました。
続いて、宮前氏は「日本における認知症共生社会と高島平スタディでの取り組み」をテーマに、まず認知症に関する支援制度の変遷を解説しました。さらに、東京都板橋区内でも特に高齢化が進んでいる高島平地区にある「高島平団地」や、認知症のある高齢者の生活実態調査と支援を目的に同団地に開設された「高島平ココからステーション」での取り組みを紹介。「認知症と診断された人やもの忘れが心配な人を対象に開催する本人ミーティングでは、認知症の本人は自分や他の人の体験談を共有し、まだ認知症ではない人は認知症への認識が変わっていっています」と語り、「自分が何者かを多くの人にわかってもらい、お互いの違いを認め合うための対話が、共生社会にとって大事なことなのではないでしょうか」と締めくくりました。
講演後に設けられた質疑応答では、参加者から多くの質問が寄せられました。