文化社会学部アジア学科と教養学部芸術学科では12月6日に、湘南キャンパスで「知のコスモス―台湾民間芸能の世界―」を開催しました。台湾を含む閩南語(びんなんご)方言地域で中国の明清時代から盛んに行われてきた「説唱」(語りもの)と呼ばれる歌と演奏で物語を語る民間芸能「唸歌」(ねんか)を継承する「微笑唸歌団」を招き、講演と演奏を通じて理解を深める機会にしようと企画したものです。出演した儲見智さんと林恬安さんは、台湾の人間国宝である楊秀卿氏に師事し、2011年に「微笑唸歌団」を結成。台湾内外で積極的に唸歌の普及?推進に努め、台湾ではテレビ?ラジオなどにも多く出演するなど活躍中しています。
当日は、アジア学科と芸術学科の学生や教員及び近隣にお住まいの方ら約30名が参加。今回のイベントを企画したアジア学科の立石謙次准教授による紹介に続いて、儲さんが低音を奏でる大広弦と呼ばれる擦弦楽器、林さんが撥弦楽器である月琴を手に登場。さっそく「あいさつ」の演奏を披露するとともに、台湾では250年余りの歴史を持つ唸歌を構成する「三大要素」として一句七文字、四句で一篇を構成する漢詩などにも見られる「四句連」の歌詞や「歌仔」と呼ばれる曲調、月琴と大広弦の楽器について解説しました。さらに、唸歌の内容を視覚でも伝えるために制作された映像とともに「哪吒閙東海」(哪吒、東海を騒がす)を披露。儲さんの軽妙な語り口と林さんが使い分ける声音、二人の熱演に聴衆は引き込まれていました。また、1930年代に台湾が日本統治下にあった時代に歌われた、日本語と台湾語を繰り返す「新編国語白話歌」についても紹介したほか、会場から寄せられた質問にも回答し、「唸歌の芸は師匠から口伝えでのみ伝承されますが、演者はどんどん減っているのが現状です。伝統芸能を守るために上の世代の方たちからさまざまなものを学び、資料としてまとめて後世に伝えていきたい」と語りました。
参加した学生たちは、「芸術学科で声楽について学んでおり、このような機会に民族音楽に触れられて興味深く感じました」「台湾語では何を話しているのかはわかりませんが、お二人が制作した映像も合わせてみることで、物語の世界観を理解でき楽しく感じました」と感想を話していました。芸術学科で本イベントの運営に携わった松本奈穂子准教授は、「アジア学科との連携によって学生たちが台湾の民間芸能に直接触れられる貴重な機会になりました。総合大学ならではのイベントを今後も開いていければ」とコメント。通訳も務めた立石准教授は、「中国東南部から東南アジアの華人社会にかけて用いられる閩南語の芸能研究を通じて微笑唸歌団のお二人と知り合い、ぜひ日本の学生や近隣住民の方たちにも魅力ある民間伝統芸能に触れてもらいたいと考え、大学による文化活動にもつながると今回の公演を企画しました。お二人は積極的に台湾内外で普及活動にも取り組んでおり、私たちと双方にとって貴重な機会になったと感じています」と話していました。