文化社会学部北欧学科では10月29日に湘南キャンパスで、知のコスモス講演会「アルヴァル?アールトの建築とその魅力」を開催しました。アールトは、フィンランドを代表する建築家?インテリアデザイナーの一人で、20世紀モダニズムの巨匠として知られています。今回の講演会では、アールトの自邸などを管理?公開しているアールト財団のハンナ?パルナ氏を講師に招き、本学科や工学部建築学科の学生、教職員ら約90名が参加しました。
パルナ氏は、パイミオのサナトリウム(結核療養所)や自邸、アトリエ、フィンランディアホールといった作品を通して、アールトの歩みや建築思想、作品の特徴などを紹介。モダニズムの建築家でありながら、利用者の快適性を何よりも重視したことを説明し、「バイミョンのサナトリウムでは、病室はすべて南東向きに作られ、かつ騒音の原因となる食堂は病棟と別棟にしているほか、壁やインテリアにさまざまな色を用いることで、患者の気持ちが少しでも上向くよう工夫されている」と語りました。また家具デザイナーであった妻のアイノと協力し、機能的でデザイン性に優れ、かつ安価に入手できる照明や椅子、机を開発したことや、日本文化の影響を受けた作品も手掛けていることに触れ、「アールトは、人間と空間、自然環境の調和を大切にしていました。私たちもアールトの自邸で毎日仕事をしていますが、そうした考えに基づいて設計されているからこそ飽きることがなく、いつも新しい発見があります。そしてフィンランド人なら誰もが一度は彼の作品に触れたことがあり、それぞれの『アールト体験』をしています。もしフィンランド人と話す機会があればその人のアールト体験を聞いてみてください。きっと面白い答えが聞けると思いますよ」と話しました。
参加した学生たちは、「アールトの建築については多少の知識がありましたが、照明や家具まで設計しているとは思っておらず、講演内で紹介された作品がどれも面白くて刺激を受けました」「冬場はほとんど日が差さない北欧で、光を大切にした作品を取り入れるなど、人を大切にしたことが多くの人に愛される理由なのだと知って興味深かった。著名な建築家でありながら富裕層だけでなく、すべての国民に貢献したいと考えたとても偉大な人物だったのだと知れたことがなによりよかった」と話していました。