教養学部人間環境学科の倉元隆之准教授が、9月20日に発表された第66次南極地域観測隊員に選ばれました。観測隊は90名のメンバーで構成される予定で、倉元准教授はその先遣隊として10月27日に日本を出発。空路、南アフリカのケープタウンを経由して昭和基地に入り、およそ1000km内陸にある観測地点「ドームふじ観測拠点Ⅱ」に陸路で移動。雪が積み重なってできた数千mにもなる厚い氷床をドリルで掘削し、円柱状のサンプル「アイスコア」の採取に臨みます。
南極大陸を覆っている氷は雪が押し固められてできており、過去数十万年にさかのぼる地球の大気成分や火山灰などが連続的に保存されています。伏せた“おわん型”の南極大陸の頂上、標高3810mにある「ドームふじ観測拠点Ⅱ」では、100万年を超える最古級のアイスコアの掘削が期待されています。2022年から始まった掘削プロジェクトは、慎重な準備を経て倉元准教授が参加する今回の観測でいよいよ最古級のアイスコア掘削に挑みます。
倉元准教授の専門は、地球の水環境や気候変動に関する研究です。信州大学大学院博士課程修了後、国立極地研究所研究員として2010年の第52次南極地域観測に参加。その後、2015年から18年にかけて福島県環境創造センターで研究活動に従事しました。東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故後には、河川を流下する放射性セシウム量の現地調査などに取り組み、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所も視察。近年は湘南キャンパスの近隣の丹沢山地などで、学生?大学院生らと共に水環境の調査を実施しています。
倉元准教授は本学の特別研究期間制度を利用して観測に参加。「最古級アイスコアの掘削はいわば地球のタイムカプセルを開けに行く仕事。その先鞭に就けることは光栄です。前回第52次に参加したときは南極に行きたいという夢がかなったことで無我夢中でした。あれから14年、自分が積み重ねてきた体験と知見を生かし、他の若い隊員らとも協力して気持ちを新たに臨みたい」と倉元准教授。「今回の観測に参加できることについて、学部長はじめ学科の先生方、大学のご理解に感謝しています。私にとって南極観測もキャンパス近隣の調査もつながりのある大切な研究。学生の皆さんには“かなわないのではないか”と思うくらいの大きな夢を持ち、毎日を過ごしてもらいたいと思います」と話しています。