教養学部人間環境学科の万城目正雄教授と芸術学科の富田誠教授の研究室に所属する学生たちが、神奈川県大磯町産の摘果ミカンを原料とした「Sボトル 湘南オールインワンスキンケアローション」(販売=NPO法人湘南スタイル、製造=株式会社茅ヶ崎香料)の商品開発に携わりました。この活動は、両学科が連携して多彩なプロジェクトに取り組む来年度開講予定の学科共有科目『プロジェクト研究』の先行事例として実施したものです。万城目研究室が商品開発を、富田研究室がパッケージデザインを担当。2月から湘南スタイルが運営する「湘南工房」で販売がスタートしており、大磯町のふるさと納税返礼品にも選出されています。

教養学部では2009年度から、大磯町と二宮町のミカン農家を支援するプロジェクト「湘南みかんの木パートナーシッププログラム」(主催=NPO法人湘南スタイル)に参加。万城目研究室では持続可能な産業とするための解決策提案を目的とした課外授業を実施してきました。近年は、高齢化やコロナ禍による影響で農園存続に危機感を持つ農家からアイデアを求められるようになり、23年度に収穫前の間引きによって廃棄されていた摘果ミカンを用いた化粧品の製造を提案。農園での収穫体験や有識者との意見交換会で出た意見を踏まえ、試作を繰り返して製品が完成しました。研究室に所属する佐藤汐莉さん(3年次生)は、「摘果ミカンには成熟した実に比べて血管拡張作用があると言われるヘスペリジンが豊富に含まれていることから、今まで廃棄していたものを化粧品として有効活用できると考え提案しました。湘南、スキンケア、サステナブルの頭文字であるSを商品名に取り入れています。テクスチャーや香り、色味など細部までこだわり抜いた商品です」とポイントを説明。山田愛美さん(同)は、「化粧水や保湿剤など細かく分けず、1本でスキンケアが完結するオールインワンローションにしたことで、旅行などに持っていく際にもかさばらない商品にできました。より多くの人に手に取ってもらうことを重視して企画しました」と話します。
パッケージデザインを担当した富田研究室は、24年春から活動に参加。農園見学などを通じてイメージをふくらませ、授業内でデザインコンペティションを実施してきました。複数のデザイン案の中から、寺谷昇大さん(同)考案のロゴマークと、石田あす香さん(同)が点描で描いたイラストを掛け合わせて完成。寺谷さんは、「今後Sボトルの商品名でさまざまな商品が展開されていく可能性を考え、どのような容器にも合わせやすいようロゴマークは左右対称になっています。シンプルなデザインは長い期間でも使ってもらいやすいと考えました」と話します。石田さんは、「湘南の爽やかさ、シンプルさ、高級感、男女問わず使えることを意識してデザインしました。パッケージデザインは初めてだったので、万城目研究室の皆さんのイメージを形にする難しさや、自分自身が現場に足を運ぶことの大切さを実感しました」と振り返りました。


万城目教授は、「これまで地域の課題を考え解決策を提案する取り組みを続けてきたものの、実際に商品化まで進んだのは初めてであり、大きな成果だと感じています。また、ビジネスプランのコンセプトをしっかりまとめないとデザインを形づくることはできないので、芸術学科とのコラボレーションは学生たちにとって貴重な経験になったと思います」と語ります。また、富田教授は、「デザインは実際の作業工程よりもクライアントとの調整が一番難しく、本件に関わる多くの方々とのコミュニケーションを通じて得た経験はかけがえのないものだと思います。物を作るだけではない、販路や商品展開といったビジネスの視点を学べたことが、今後の学生の成長につながると期待しています」と話しています。