大学院人間環境学研究科では7月26日にオンラインで、FD研修会「ポストコロナの免疫学入門~私たちは、どうやって自己免疫力を高め、ウェルビーイングを得られるか~」を開催しました。新型コロナの5類感染症移行でコロナ禍以前の状態に戻りつつある一方、厚生労働省や各都道府県からの情報が減少する中、学内外で新規感染者が継続的に発生しています。さらに、インフルエンザやはしか、ヘルパンギーナといった感染症が流行するなど、教育実践、研究指導における感染症対策が必要な状況にあります。今回の研修会では、銀座鳳凰クリニック院長で、本研究科客員准教授の永井恒志氏が講師を務め、感染症の現状や自己免疫力を高める手段について紹介しました。
当日は本研究科の教員以外にも、工学部や体育学部、医学部などさまざまな学部学科の教員が参加。初めに勝田悟研究科長が講演への期待を述べたのち、進行役の岩本泰教授が開催主旨と講師を紹介しました。続いて、永井氏が自然免疫と獲得免疫などに関する基礎知識から、新型コロナワクチンのもたらす身体への影響、軽い倦怠感や咳などの症状がありさまざまな場面で問題になっている新型コロナ後遺症の要因と免疫の関係を解説しました。永井氏は、「LONG COVIDと呼ばれる新型コロナ後遺症の特徴は日常に影響の出る倦怠感であり、勤務時間短縮から休職、勤め先を解雇される事例もあるなど社会生活が困難になってしまいます。特に疲労感に注意が必要であり、大学の中でもLONG COVIDへの意識を共有する必要があります」と指摘しました。一方で、「免疫力を高めるためにはビタミンの補充が大切です。日本人の多くは血中のビタミンD濃度が低く、最低でも1日5000国際単位(IU)の内服が必要です。また野菜スープによる栄養摂取や腸内フローラを整えるなど科学的な根拠に基づいて感染症を乗り越え、免疫を鍛えて明日を生き抜きましょう」と訴えかけました。
講演後の質疑応答では、「新型コロナ感染症の5類移行から、日常でのアルコール消毒への考え方にも変化が出ているように感じています。コロナ禍以来の対策への考え方を変える必要があるのでしょうか」「のどの痛みや発熱がなく、COVID-19に感染していないと思っていても、いつの間にか感染してしまい、後遺症だけ発現するといったことはあるのでしょうか?」といった質問が寄せられ、永井氏が「消毒の効果は短く、清潔にしすぎると菌と共生する時間も減少し免疫に影響があります」「新型コロナの発現と後遺症は関係がありません。知らずに感染していて後遺症だけ出る人も多くいます」など一つひとつ丁寧に回答。最後に、本研究科所属である内田晴久静岡キャンパス長が、「永井先生のお話を参考に、学生指導の中で、さまざまなことに配慮していかなくてはならないと実感しました」とまとめました。