大学院芸術学研究科造型芸術専攻を2010年度に修了し、教養学部芸術学科美術学課程で後輩の指導にあたっている原田理糸非常勤講師が、9月17日から 29日まで東京?国立新美術館で開催された「第78回新制作展」の彫刻部門に入選するとともに、17日に行われた授賞式で「新作家賞」を初受賞しました。 また、同じく造型芸術専攻を2004年度に修了した小口偉さんも入選を果たしました。
毎年行われている同美術展は美術団体「新制作協会」が主催し、日本を代表する美術家を数多く輩出してきた公募展です。絵画、彫刻、スペースデザインの3部 門からなり、会員の投票によって入選作が決定され、その中から「協会賞」と「新作家賞」が選ばれます。今年度は彫刻部門で7名が新作家賞に輝き、6回目の 入選となる原田講師がその一人となりました。受賞作のタイトルは『のびひろがる形』。メタセコイアの木を材料にした高さ2m50cm、幅2m30cm、奥 行き1m40cmの大作で、種から幹が伸びて2つに分かれていく姿を表現しました。
原田講師は構想期間も含め、約半年かけて完成させた作品について、「今回初めてメタセコイアを使いましたが、柔らかく大らかで優しい性質を持っている反 面、とても生命力が強いと感じました。制作に入るまでの間、根や枝葉が切られた状態で野外に横倒しで置いておいた木が雨水をスポンジのように吸い、新芽を どんどん芽生えさせていきました。その様子を見て、この木は死んでいない、生きているのだと感動し、これを使って生命の素晴らしさを形にしてみたい、何か が伸びていく様子や動いている状態を生き生きとした彫刻にして表したいと思いました」と語ります。また、「今までの仕事を冷静に見直して、自分が本当にや りたいことをやろうと考えた結果、ふっきれた精神状態が作品に出たのだと思います。受賞はもちろんうれしく励みにもなりますが、向かうべき方向性や課題が 見つかったことが何よりの収穫です」と話しています。
一方、クスノキを材料にした小口さんの作品タイトルは『hang』。「形態の美しさや強さを意識して制作活動を続けています。作品をより彫刻的にするため に空間に訴えかける強さの表現方法を考え、一つの形態と一つの形態が傾斜して組み合わさった形にしつらえました。ある程度納得いく形に表現できたと思いま すが、まだまだ足りないものも見えてきました。次の制作へ向けてまた頑張っていきます」と感想を述べました。
<写真左:原田理糸作『のびひろがる形』 写真右:小口偉作『hang』>