海洋学部水産学科では3月7日に品川キャンパスで、8日にJR静岡駅ビル「パルシェ」で、公開セミナー「水産学科の深さと広さを知ろう!」を開催しました。本学科では、水生生物の生態や分類、増養殖および持続的利用に関する知識と技術である「生物生産学分野」、食品の加工?製造、食の機能、安全?安心に関する知識と技術である「食品科学分野」を学ぶことができます。本セミナーは、そうした特徴を高校生や一般の方々に知っていただき、教育?研究成果を広く社会に還元するとともに、海洋への理解を深めて水産に関心を持っていただこうと開いているものです。今回は、前半が本学科の教員5名による研究分野の解説、後半が教員のトークショーと質疑応答の2部構成で実施しました。


8日の静岡会場には小学生や高校生、地域住民ら約30名が来場しました。初めに秋山信彦教授が「水族の卵と繁殖行動」をテーマに講演。ウグイ、アユ、シロウオやギンザケといった身近な魚卵の多様な性質について解説し、貴重な映像を用いて托卵する魚や親が口の中で育てる口腔哺育をする種類、卵胎生のものなどさまざまな魚の“子育て”について紹介しました。続いて、学科長の後藤慶一教授が「人工知能に人は勝てるか~マグロの目利き人vs超音波AI~」と題して講演。マグロは世界的に見ると半数以上が缶詰に加工される一方で、日本では高級食材として生で食され、鮮度よくおいしいマグロを見極めるために尾を切り落として断面を見る「尾切り」によって魚体の状態を見極める達人が「目利き」として活躍する現状を説明。人材不足や経験知といった課題が指摘される中で、その解決のために企業と共同で開発している超音波を用いた測定装置について紹介し、マグロやカツオの評価システム開発など今後の取り組みについて話しました。


次に、中村雅子准教授が「地球沸騰化の時代に生きるサンゴ」をテーマに登壇。豊かな生態系を育むサンゴ生態系について紹介し、サンゴが死滅の危機に瀕している世界的な白化現象について、原因や現状を解説しました。さらに、「海水温の上昇に伴って、分布北限として本学科のある静岡キャンパスが面する駿河湾でも多様なサンゴが観察されています」と話しました。続いて清水宗茂准教授が、「海の恵みを生かした、特長ある食品開発への挑戦!」と題して講演。失われた食文化の継承を目指して取り組んでいる塩カツオやアカモクといった静岡の伝統食材を用いた商品開発ついて紹介しました。最後に佐藤成祥講師が「交尾の後が肝心!複雑怪奇なイカの繁殖方法」をテーマに講演。雄によってやり方が異なる代替繁殖戦略についてユーモアを交えながら解説し、自身の専門であるヒメイカのユニークな繁殖行動について動画を用いて説明しました。



後半のトークショーでは李銀姫准教授が司会を務め、「なぜ研究者になったのか」「研究や実験の最中に“楽しい!”と感じる時は?」などの質問を出し、5名の教員が回答。

続く参加者からの質問コーナーでは、「なぜ小さな生き物を研究するのか」「研究者の中でもなぜ大学教員になったのか」「他大学の水産学部などと比べて海洋学部の特徴は?」など多様な質問が寄せられ、教員らが思わず答えに窮する場面や笑いを誘う答えなどもありました。愛知県から訪れた親子連れは、「知らないことを分かりやすく説明してもらい、あっという間の時間でした」とコメント。静岡市内の高校生からは「先生方それぞれに研究を極めていてすごいと思いました。自分も勉強してみたい」といった感想が聞かれました。