医学部医学科の宮木陽輔さん(2年次生※)が、3月27日に新潟市で行われた第124回日本解剖学会総会?全国学術集会の学生セッションに参加。「副腎動脈から分岐する性腺動脈の頻度とその発生学的考察」をテーマにポスター発表し、優秀発表賞を受賞しました。日本解剖学会は日本で最も歴史のある学会の一つで、総会?学術集会は学会の進歩と普及を図り、学術の発展と国民の福祉に寄与することを目的として毎年開かれています。
性腺動脈は、通常、腹大動脈や腎動脈から分岐して精巣や卵巣に分布しています。宮木さんは1年次生の冬に初めて臨んだ人体解剖実習で、偶然、副腎動脈から分岐している性腺動脈を発見しました。「珍しい例なので追究してみては」という寺山隼人准教授(基礎医学系生体構造機能学)の勧めで研究を開始。寺山准教授をはじめ、同領域の坂部貢教授、曲寧講師、梅本佳納榮助教の指導を受けながら研究を進めました。先行研究や文献を調べたところ同様の事例はすでに報告されていたものの、解剖実習のカリキュラム終了後も長期休暇や授業の合間を利用して一人で解剖に取り組むなど研究を継続し、遂にこれまで確認されていなかった走行の性腺動脈を発見。それが、医師や医療関連専門職を目指す学部生を対象に実施されている同学会の学生セッションでの受賞につながりました。
「初めての解剖で興味深い血管走行を目にしたとき、世界中の誰も知らない新しい発見があるかもしれないと思ってわくわくしました」という宮木さん。「東京理科大学理工学部で卒業研究に着手する直前に医学部に編入したため、本格的な研究と論文作成を経験したいと思っていたこともあり、研究を勧められたときは“やります”と即答しました。研究の面白さや奥深さがわかってくると、さらに追究したいという気持ちが強くなります。新たな走行を発見できたのは学会発表の1週間前でした。地道に続けて本当によかった」と振り返ります。「指導してくださった医学部長の坂部貢先生をはじめ、生体構造機能学領域の解剖担当の先生方、そしてご遺体を献体してくださった方々に感謝しています。今回の受賞は、今後も研究を続ける上での自信になりました。研究の過程で新たな疑問もわいてきて、追究したいテーマが広がっています。当面の目標はこの成果を英語の論文にまとめることですが、もちろんその後も腹部の脈管に関する研究を続けます」と意欲を見せていました。
指導にあたった坂部学部長は、「医師には、人に対する尊厳を忘れない豊かな人間性とともに、“科学者としての目”が常に求められます。そのためには、学部生時代からリサーチマインドを身に付けることが大切です。これからも探究心を持ち続けてほしい」と話しています。
※学年は受賞当時