政治経済学部では11月6日に湘南キャンパスで、政治経済学部公開セミナー「デンマークにおけるデジタル化」を開催しました。デンマーク?財務省デジタル化局のチーフアドバイザーを務める本学訪問研究員のカレン?イエルスボ?アイバーセン氏が講師を務め、国連がまとめた2018年世界電子政府ランキングで1位になった同国のデジタル化について日本語で語ったもの。学生や教職員約60名が参加しました。
カレン氏は、日本とデンマークは市民の生活水準が近く、同じように高齢化が進んでいることや、マイナンバー制度が導入されているといった共通点を説明。デンマークでは2003年にデジタルポスト(電子公共ポータル?サイト)が導入され、91%が利用していることに触れ、「私は必要な情報がデジタルポストに届くように設定しています。たとえば2年おきに受けなければいけない乳がんの検診日が近づくとデジタルポストに通知が届き、検査結果も同様に届きます。大学では学生がリポートをインターネット上のシステムにアップし、教員は市民IDを使ってそれを読み、成績をつけると学生のメールに通知が届く。同時に、教員は仕事を終えたと認識され、銀行から給料が支払われたとの通知がデジタルポストに届きます」と紹介しました。「国を挙げての電子化は、政府と市民との信頼関係があってこそ成り立つものであり、デジタルポストが84%の国民の満足度を得ているのは信頼関係の証明でもあります」と話す一方で、デンマークでも「過去には入院中の患者がまだ生きているにもかかわらず亡くなったとの情報が登録されてしまい、銀行口座は止められ、年金は支払われず、パスポートや運転免許証も破棄されるといったトラブルがありました」と話し、日本のマイナンバー?カードがなぜ普及が進まないのかについて、現在、日本で進めている研究の内容についてのお話がありました。
講演後は「日本では内閣府が担っているデジタル化がデンマークでは財務省の管轄なのはなぜですか?」「デジタル化を進めたことで、政府の仕事はどう変わっていったのか、具体的な数字や事例を教えてください」など活発な質疑応答が行われました。参加した学生は、「行政学を学んでいるので、電子政府や行政改革といった内容を知りたいと思い参加しました。デンマークは幸福の国と呼ばれるように、福祉の面で優れていると思っていましたが、ここまでデジタル化が進んでいるとは驚きました。卒業後は公務員になるので、政策の立案などに生かしていきたい」と語りました。