化学科の荒井堅太講師と、荒井研究室で研究を行っている大学院生の西沢さん(修士1年生)が共著で発表した研究論文「Resin-supported cyclic telluride as a heterogeneous promoter of disulfide formation under solid–liquid biphasic conditions」がイギリス王立化学会の発行するNew Journal of Chemistryの表紙に選ばれました。
西沢さん(修士1年生)は、学部4年生時からユニークな酸化還元特性を示す含テルル有機化合物(テルリド)の合成とその応用に取り組んできました。テルリドは、非常に反応性が高く魅力的ですが、その高い毒性と環境への影響が懸念されています。西沢さんは、このような問題を解決するために、テルリドを高分子に結合させた樹脂製の新しい機能性物質の合成に成功しました。固体表面上のテルリドは、過酸化物(過酸化水素など)の存在下において、溶液中のチオール分子(R-SH)を効率よくジスルフィド(R-SS-R)分子へ酸化させる触媒能力を発揮しました。使用した樹脂は、ろ過によって簡単に除去することができ、得られた溶液を濃縮するだけで、簡単に目的のR-SS-Rを得ることができます。精製工程を必要としないため、有機溶媒の使用を最小限に抑えることができ、さらに毒性が懸念されるテルリドを固体として回収できることから、環境にやさしい化学反応を実現したと言えます。
R-SHからR-SS-Rへの酸化反応は、バイオ医薬品生産における重要工程の一つであることから、インスリンや抗体医薬品などの工業生産において利用されることが期待されます。西沢さんは、現在、樹脂の改良と共に、バイオ医薬合成への実装を目指して研究を続けています。