海洋学研究科の大学院生が環境放射能研究会の「研究会奨励賞」を受賞しました

大学院海洋学研究科海洋学専攻1年次生の山田萌々加さん(指導教員=西川淳教授)がこのほど、第23回環境放射能研究会において「研究会奨励賞」を受賞しました。同研究会は、放射能や放射線の測定を専門とする研究者や技術者、学生らによる情報交換や交流の場を創出するべく、毎年開催されています。山田さんは海洋学部4年次に在籍していた3月8日にオンラインで開催された同研究会で、「福島沖の動物プランクトンにおけるCs-137濃度の変動は群集構造や栄養段階構造から説明できるのか?: 2018年および2020年の結果より」と題して発表。その内容が評価され、研究会奨励賞に選出されました。

海洋動物プランクトンの種多様性や生物生態学を専門とする西川教授の研究室では、2011年に発生した東日本大震災以降、東京電力福島第一原子力発電所沖の動物プランクトンと放射能(セシウム)濃度との関係について調査しています。震災発生後、世界的に水圏生物内のセシウム濃度に関する研究が展開されるようになった一方で、プランクトンをはじめとした低次食段階生物に関してはデータが少なく、それぞれの生態や捕食-被食関係(栄養段階)を考慮した研究成果はほとんどありません。また、これまで報告されている動物プランクトンのセシウム濃度の減少率は、海水と比べて低く、加えて変動が大きいという特徴が判明しているものの、その理由は明らかになっていません。そこで山田さんは18年と20年に福島沖で採集し、研究室に保管していた試料を分析。調査ポイントごとに動物プランクトンの種類や量などを解析して群集構造や栄養段階構造を明らかにしながら、それらとセシウム濃度との関係性についてまとめました。

山田さんは、「受賞の連絡が来たときは驚いて、すぐには実感が湧きませんでした。大学院でも研究を続けているので、より社会に貢献できる成果を残して、発表もうまくなりたい」と抱負を語ります。西川教授は、「本研究の成果は切り口が既存のものと違った点が評価されたと考えています。山田さんは研究室の中でも随一の努力家で、理解力も非常に高い。今後も大学院生として、独創的な研究成果を残してほしいと期待しています」と話しています。