大学院海洋学研究科海洋学専攻を2020年度に修了した伊藤菜波さん(指導教員=野原健司准教授)が、新種のトラザメを発見。学名を「Scyliorhinus hachijoensis」、標準和名を「フカミトラザメ」と命名し、1月20日に動物分類学の国際学術誌『ZOOTAXA』で発表しました。
これまでにトラザメ属は、日本で2種が報告されていますが、下田海中水族館(静岡県)で飼育されてきた個体が未記載種である可能性があり、伊藤さんが海洋学部4年時からこの個体の特徴を形態的?遺伝的に精査してきました。ウロコの形状を電子顕微鏡で観察すると、トラザメは隆起が5カ所であるのに対して、フカミトラザメは3カ所であると判明。また、個体の表面に細かな黒点があることや、卵殻の表面形状にも既知種と違いがあると明らかにしました。
伊藤さんは、「学部4年時の1年間では本研究成果をまとめきれず、『自分で最後まで研究をやり遂げたい』と考え、修士課程に進学しました。研究中には博物館に足を運んで標本を観察することも多く、日本各地だけでなく台湾にも行きました。当時は辛いと思ったこともありましたが、今振り返れば二度とできない貴重な経験ができたと感じています」と話し、「大学院修了後は環境コンサルタントの仕事についていて、この研究と向き合えるのは休日だけでした。時間のやりくりは大変でしたが、野原先生から“一日に一行でもいいから論文の作成を進めよう”と声をかけてもらい、その言葉が大きなモチベーションになりました。とても時間がかかってしまいましたが、その分大きな達成感を得られました」と振り返りながら語りました。
『ZOOTAXA 5092(3)』
https://www.mapress.com/zt/article/view/zootaxa.5092.3.5