海洋生物学科がシンポジウム「マグロ、サメ/ラブカ、イルカ―大型海洋動物!」を開催しました

海洋学部海洋生物学科では9月22日に品川キャンパスで、シンポジウム「マグロ、サメ/ラブカ、イルカ―大型海洋動物!」を開催しました。これは一般の方々に海洋生物に関する理解を深めてもらおうと実施しているシンポジウムです。今回は、本学科の教員と海洋科学博物館の学芸員がマグロ、サメ、ラブカ、イルカの大型海洋動物研究に関する最新の知見を披露しました。

約160名が来場した当日は、冒頭で本学科の村山司教授(海洋科学博物館館長)があいさつし、シンポジウムの趣旨を説明しました。まず野原健司教授が登壇し、「大きな魚の小さな話~マグロゲノムを眺めてみたら~」と題して、日本人になじみの深いマグロの遺伝情報を生かした種類判別の方法について、種や産地の偽装防止に向けて取り組んでいる清水港での冷凍マグロ水揚げの現場での検査の様子を紹介。さらに、水揚げ現場ですぐに検査できる現場即応型検査システムの開発に向けた取り組みを解説し、「種の違いが分かれば、適正な流通や資源管理に貢献できる」と語りました。

続いて、堀江琢准教授が「変化する駿河湾にやってくるサメたち」をテーマに、駿河湾にも多く来遊するなど日本沿岸におけるサメの目撃情報や漁業被害が増加している現状について説明。1992年から本学科の教員によって続いている駿河湾の定置網で捕獲される外洋性サメ類について、長期間にわたる調査結果を紹介するとともに、「減少傾向のサメ類は個体数自体が減ったのか、環境変動による生息地の変化なのか、サメは世界的に保護対象であり、さらなるモニタリングが必要」とまとめました。

後半は、海洋科学博物館の山田一幸学芸員が「深海の住人 ラブカの秘密に迫る」のテーマで、同博物館と海洋学部の研究者らが1980年代から長年にわたって取り組んできた主に水深500から1000mに生息する深海魚ラブカの研究について紹介しました。山田学芸員は、ラブカの生態から口やエラの構造といった特徴について触れながら、捕獲されたラブカの飼育試験の結果や、福島県の水族館である「アクアマリンふくしま」と連携し2016年から始めた「ラブカ研究プロジェクト」の成果を紹介するとともに、「深海魚の飼育は課題も多くありますが、いつか水槽の中で多くの人にご覧いただける展示ができれば」と展望を語りました。

最後は同博物館館長も務める村山司教授が登壇。「イルカと話す日」と題して、30年以上にわたって続けている記憶力や学習能力が高いとされるイルカと会話ができるようになるための研究を紹介しました。村山教授は、千葉県?鴨川シーワールドのシロイルカ(ベルーガ)?ナックが言葉を覚える過程について、研究を始めたきっかけや調査方法などを詳しく解説し、ヒトの言語習得と同じように、音、文字(記号)、対象を覚えさせる過程について動画を交えて紹介しました。質疑応答では、来場者から「ショーなどで飼育員のサインに応えてパフォーマンスするイルカを見るが、文字の認識との違いはありますか?」と質問が寄せられ、村山教授が「指示のサインは人間の動作によりますが、記号は動きません。イルカは動かないものには反応しないので、その点を認識させ、行動を条件づけることが難しい部分です」と回答していました。

最後には登壇者全員に向けた質疑応答の時間も設け、深海魚の研究や水族館の学芸員を目指す参加者らから多数の質問が寄せられました。