平塚盲学校の児童?生徒を対象に造形ワークショップを実施しました

資格教育センターの篠原聰准教授と学芸員の資格取得を目指す学生たちが9月12日、26日、10月3日に、湘南キャンパスの松前記念館と神奈川県立平塚盲学校で同校の児童?生徒を対象に造形ワークショップを実施しました。2021年度まで3年にわたり神奈川県と本学が展開してきた「ともいきアートサポート事業」の主旨を受け継ぎ、新たに「地域連携によるユニバーサル?ミュージアム普及事業」として同校と本学が昨年度から取り組んでいるものです。

3回にわたるワークショップでは、国立民族学博物館教授の広瀬浩二郎氏、筑波大学芸術系准教授の宮坂慎司氏が講師を務め、コンクリート構造物内側の補強材となるいわゆる鉄筋である「異形棒鋼」を造形素材に使用。初回は事前準備として鉄筋をカットベンダーで20㎝から40㎝程度に切断し、26日には平塚盲学校で制作を開始しました。子どもたちは宮坂氏の指導で素材の触り心地や、造形物のイメージを膨らませると、空間を意識して芯材の加工に取り組みました。最終回となった3日は、初めに広瀬氏や宮坂氏の作品を手に取って鑑賞するとともに自らの作品のイメージをふたたび固め直して創作に挑みました。宮坂氏が「皆さんは作家であり、制作チームのリーダーです。大学生と一緒に形をつくり、素材や紙粘土の加工も手伝ってもらいましょう。大事なのは“自分がこうしたい”を形にすることです」と呼びかけると、学生たちは子どもたちのそばで声をかけながらパーツの切断や折り曲げ、紙粘土を付ける作業をサポートしました。作品が固まってくると、宮坂氏が「タイトルを付けましょう」と呼びかけ、一人ひとりがコンセプトと合わせて紹介。「謎めいた生物」や「JR東日本?武蔵野線と京葉線の分岐」、「キャンプパーティー」など個性豊かな作品が並びました。

子どもたちからは、「ワークショップを通して表現力や想像力が豊かなになったと感じました」「作品が美術館や学校に展示されると聞いてとてもうれしい。期待感がわいてきます」「まだみんなの作品に触れていないので、この後鑑賞しあうのが楽しみです」といった言葉が聞かれました。授業をサポートした田中実紀さん(大学院文学研究科2年次生)は、「盲学校の生徒たちと会うのは初めてで、楽しみにしてきました。“何を作っているの?”“作品について教えて”と声をかけるとみんな一生懸命教えてくれて、子どもたちの豊かな発想に驚きました。博物館の展示について学んでいることもあり、タイトルの付け方や作品の意図などを理解する過程は今後に生かせると感じました」とコメント。片山美咲さん(文化社会学部4年次生)は、「子どもたちの作品は自由さがあふれ、想像力や言葉の表現力の高さを感じました。将来は学芸員として美術館のバリアフリーに携わりたいと考えているので、貴重な学びの機会になりました」と話していました。

篠原准教授は、「博物館や美術館と特別支援学校の連携は今後、さらに社会から求められていきます。学生たちにはワークショップをサポートすることで、学芸員になった際に想定される障害がある来館者との交流やコミュニケーションについて学びを深めてもらいたい」と期待を語りました。

なお、完成した作品は来年1月に、銀座ギャラリー青羅で開催される展示会「“触れる”アートGINZA2025」などで展示される予定です。

※本ワークショップは、筑波大学芸術系と共英製鋼株式会社による共同研究「アートの視点によるサスティナブルな建築鋼材の可能性開拓」の協力を得て行われています。