ティーチングクオリフィケーションセンターの篠原聰准教授と学芸員を目指す学生が9月18と23日に、東京都北区文化芸術活動拠点ココキタと赤羽南2丁目児童遊園で開かれた彫刻メンテナンスワークショップ「彫刻を手と目で見て楽しもう!」(主催:公益財団法人北区文化振興財団)の運営に協力しました。このイベントは、同区内の著名な屋外彫刻をめぐり、実際に作品に触りながら、視覚だけでなく触覚を通して彫刻を鑑賞することを目的としたものです。
初回の18日はココキタで、篠原准教授と国立民族学博物館准教授の広瀬浩二郎氏が美術品を視覚だけでなく触覚を使って鑑賞することの楽しさやその方法ついて説明。参加者は、互いの体の一部が触れ合った状態で相手の動きを感じとる体験に臨み、触覚での情報収集への理解を深めました。続いて、京都国立近代美術館学芸課で特定研究員を務める松山沙樹氏が、同館で展開しているアートを通して共生社会の実現について考えるプログラム「CONNECT?_つながる?つづく?ひろがる」を紹介。さらに、彫刻家の高見直宏氏の指導のもと、参加者は石膏と水粘土を使って「こころのかたち」をテーマにした造形制作に挑戦し、自分の気持ちについてイメージをまとめるとともに水粘土を掘り進めて石膏を流し込む型を作りました。
23日の午前中はココキタで、18日に作った型に石膏を流し込んで彫刻作品を制作。水粘土をはがして自身の作品を目にした参加者からは「イメージしていた形とは少し違うけれど、その差異もまた面白い」など、お互いの作品を見ながら話していました。午後からは赤羽南2丁目児童遊園に移動して、篠原准教授が指導して中性洗剤やブラシを使って五野上功の彫刻作品『おいらは大将』を洗浄。篠原准教授は、「多くの人は彫刻作品や立体物のふくらみに注目しがちですが、細かなくぼみや起伏を感じ取りましょう。見るだけが鑑賞ではないので、能動的に働きかけて作品を楽しんでください」と話しました。彫刻の質感や形を確認しながら洗浄に取り組んだ参加者からは、「造形制作の後にメンテナンス作業を行ったので、これまでよりも彫刻を身近に感じられました。洗浄した屋外彫刻は見るからに輝きが違い、活動の重要性を実感するとともに、自分で磨いたという付加価値がついて愛着が沸きました」といった感想が聞かれました。
北区文化振興財団の庄司万里氏は、「篠原先生にご協力いただくワークショップは今年で3年目になります。広瀬氏をはじめ専門家の先生方に毎年お声がけいただいているほか、美術作品への理解がさらに深まるイベントとしてプロデュースしていただき感謝しています。地域の方々に鑑賞方法の幅の広がりや文化財保存の大切さを感じてもらえる機会になるので、こうした活動を継続的に展開してきたい」と話していました。