静岡キャンパスでは11月23日に、人文学部の春風亭昇太客員教授による特別講義「古典芸能としての落語」を実施しました。bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户第一高校(現?付属静岡翔洋高校)卒業後、湘南校舎の文学部に入学、落語研究部からプロの落語家となった春風亭昇太師匠は、昨年10月に客員教授に就任。日本テレビ「笑点」の司会者や公益社団法人落語芸術協会会長として活躍する一方、中世城郭に関する著書を出版するなど日本文化に造詣が深いことから、今年4月から静岡キャンパスに新設した人文学部の客員教授を委嘱しました。今回の特別講義は、日本文化の学修の一環として、落語を通してコミュニケーションの重要性について実演を交えながら学ぶことを目的としたものです。当日は人文学部生75名をはじめ、静岡キャンパスの学生?教職員、一般聴講者ら計約200名が、新型コロナ感染症拡大防止対策のため同時中継でつないだ2教室に分かれて聴講しました。
昇太師匠は、自らが落語家になった経緯をはじめ、事前に取った学生アンケートの結果を紹介。「落語を鑑賞したことがあるか」や「落語のイメージは?」「興味がある古典芸能は?」といった問いへの学生たちの回答に触れながら、「『落語はつまらない』という答えが1人いましたが、なかなか勇気があります(笑)。でも、自分も子どものころはそう思っていました。大学生になり落語に興味がないのに偶然にも落語研究部に入ってしまいましたが、いやいや聞きに行った落語会で初めて聞いた落語に魅了されました。今でも覚えているその落語家は春風亭小朝師匠で、演目は『愛宕山』です。こんなに面白いものがあるのかと、そのまま落語家になってしまった。学生の皆さんも、人生何があるかわからないので、なんでも経験しておいたほうがいいですよ」と語りかけました。
続いて、「落語はカテゴリーとしては演劇です。落語家は一人が複数人を演じて物語を紡いでいきますが、これは日本にしかないスタイル。どこでどのように生まれたのか、諸説あります」と、江戸時代以降の落語の歴史を語りながら、上方落語と東京落語の違いや、昭和の名人と呼ばれた古今亭志ん生や桂文楽、三遊亭圓生の話を紹介。さらに古典と新作それぞれの落語の違いを解説し、「『古典』という言葉は昭和20年代に出てきた比較的新しい言葉です。古典をつけることで高尚な存在にしたかったのかもしれません。能や狂言はその時々の権力者の庇護を受けて『古典』になっていきましたが、落語は庶民の芸能なのです。しかし、2001年に文化芸術振興基本法が施行され、この時はじめて『落語』という文字が法律の中に入りました。落語は文化であることが明文化され、国の支援の対象になりました。そういった状況の中、私たち落語家は常に模索し、芸として完成していないと考える人も多いのが実情です。常に変化していき、未来には別の芸能になる可能性もある。不思議な立ち位置でこの国の中にあるものなのです」と語りました。
また、落語家が正座をして演じる理由や、扇子や手ぬぐいといった小道具の使い方、自らの目線を使って聞き手にイメージを膨らませる方法などを詳しく解説した後、古典落語の演目の一つである「看板のピン」を実演。セリフの緩急や抑揚、場面によって使い分けられる表情など昇太師匠の熱演に学生らが聞き入りました。さらに、それまで同時中継で聴講していた別教室に移動すると、そちらでは自らの新作落語である「ストレスの海」を披露。夫婦の牧歌的風景がパニックに転じ、ブラックユーモアのある「下げ」へとスピーディーに変化する話に、会場は笑い声に包まれました。昇太師匠は最後に、「今日は2本の話をそれぞれ別教室で披露しましたが、生で聞くのと、モニターで見たのは違うように感じたと思います。テレビやスマホの画面ではごく一部しか伝わっていない、カタログのようなものなのです。これは音楽やスポーツでも同じです。ぜひ『生』を楽しむ時間をつくってください」と呼びかけました。