海洋学部海洋生物学科の村山司教授による著書『シャチ学』(東海教育研究所)と『イルカと心は通じるか―海獣学者の孤軍奮闘記―』(新潮社)が、このほど刊行されました。村山教授は、飼育下のイルカ類を対象に感覚能力や行動特性、認知能力について実験的に検証し、ヒトとイルカの認識の違いなどについて考察しています。また、イルカの言語能力について検証するとともに、イルカに言葉を教えることでヒトとイルカの対話を目指してきました。これまでも『イルカの不思議』(誠文堂新光社)や『イルカの認知科学』(東京大学出版会)、『鯨類学』(bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户出版会)など多数の著作を通じて、イルカの魅力やその能力、鯨類全般に関する研究成果まで、多角的に発表してきました。
『シャチ学』は、その呼び名や生息する海域、体や骨のつくりといった特徴、生態などの概要、狩りの様子、人々の暮らしとの関係性、視力や音感、認知、水族館での飼育の歴史やその環境までを網羅。イルカなど他の海獣類との対比や科学、民俗学的な視点も交えながら、村山教授がこれまで続けてきた調査?研究の成果も含めて紹介しました。村山教授は、「イルカやクジラなどの仲間であるシャチは、水族館のショーに登場することもあり人気者です。しかし、その詳しい生態やヒトとのかかわりについて解説した書籍はこれまでありませんでした。そこで、生物学的な解説をはじめ、歴史、文化、餌までを含めてシャチのさまざまな特性や能力を説明しました。それぞれ専門的になりすぎないよう配慮し、これから生物学の道を志す若者たちへの入門書となる内容です」と話します。
一方の『イルカと心は通じるか―海獣学者の孤軍奮闘記―』では、村山教授が高校生のころに見たアメリカの映画『イルカの日』がきっかけとなって「イルカと話したい」という夢を持ち、その実現に向けて海獣学者の道を歩み出したきっかけや、大学院時代に東京大学海洋研究所に所属し、独学で研究の道を切り拓いた当時の様子、水産庁水産工学研究所(当時)で飼育下のイルカの行動学を研究し始め、鴨川シーワールドの協力を得て実現したイルカの脳波測定の様子などについてユーモアを交えながら紹介。海洋学部に着任後も学生たちとの実験の日々や、鴨川シーワールドにおけるシロイルカのナックとの実験とその成果など、科学的分析も踏まえながらわかりやすくまとめました。村山教授は、「数年前に本書の発行元である新潮社の雑誌でタレントのビートたけしさんと対談したことがきっかけとなり、編集者の勧めで30年余りにおよぶ研究者生活を振り返る機会を得ました。『飼育下のイルカの知能研究』はこれまで誰も手掛けていないテーマで、失敗を重ねても決してあきらめることなく続けてきたと自負しています。本書を通じて人々が抱く『イルカの賢さ』のイメージについて、実際のところを紹介できたのではないでしょうか。『シャチ学』と同様に、海獣の研究を志す若者や、自然科学に興味のある多くの人たちに読んでもらえれば」と語っています。
【出版物概要】
書名:『シャチ学』
出版社:東海教育研究所
定価:2500円+税
書名:『イルカと心は通じるか―海獣学者の孤軍奮闘記―』
出版社:新潮社
定価:780円+税