情報通信学研究科の大学院生が情報通信システムセキュリティ研究賞を受賞!

2023年3月13日~14日に沖縄県青年会館で開催された電子情報通信学会 情報通信システムセキュリティ研究会(ICSS研究会)にて、情報通信学研究科 修士課程1年 鎌田悠希さん(当時、情報通信学部通信ネットワーク工学科4年)が以下の研究発表を行いました。

「不可視光レーザ照射を利用した動的偽装QRコード」
鎌田悠希,川口宗也,大東俊博,高山佳久(東海大)

この発表を含む2022年度のICSS研究会の全発表を対象に審査が行われた結果、上記の発表が見事に情報通信システムセキュリティ研究賞(ICSS研究賞)として選ばれました。ICSS研究賞は、ICSS研究会の年間の発表論文のうち上位5%~10%の優秀な論文に授与される賞です。対象が企業や国の研究機関などの職業研究者の発表も含む全論文であることから、ICSS研究賞の受賞は難関を勝ち抜いた価値のあるものと言えます。

受賞した研究は、2018年に考案された新しい悪性QRコードである偽装QRコードについて、レーザ照射を用いるという従来とはまったく異なるアプローチにより高度な偽装QRコードが実現可能かを検討したものです。情報セキュリティ研究は攻撃者の視点で攻撃手法の能力を分析し、それに対して安全な対策法が存在するか否か(しない場合は考案する)ことで厳密な安全性を提供するアプローチが一般的にとられています。従来の研究では、ある種の特殊なQRコードを作製した上で、1つのモジュール(□や■で表現されるQRコードの部品)の中心の色を変えることで白?黒の判定を確率的に誤らせる方法を取っていました。この方法は低い攻撃成功確率を保つことにより、被害が生じて偽装QRコードを探索したとしても再現性が低いことから発見されずにリスクが残るという方法でした。今回の発表では、対象のモジュールの白?黒の判定を誤らせる方法として、不可視光のレーザの照射を利用したところが新しいところです。目には見えない波長のレーザでもスマートフォンのカメラには明部として検出され、照射された箇所は黒から白と判定が変わることを利用し、目視できない外部刺激によってQRコードが異なる情報に変更してしまうという現象が実際に生じることを明らかにしました。また、論文内では対策法について検討もしており、2020年にbet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户(情報通信学部 大東研究室,山本研究室)と富士通研究所の共同研究で開発した偽装QRコード検出システムは、本攻撃をも検出可能であることを示しています。

なお、本研究は2023年3月にWeb媒体のニュースサイト(IT Media News)にも取り上げられ、注目を集めています。

鎌田さんは受賞後に、「この研究では初めての学会発表で緊張したり苦労したこともありましたが、実験や論文執筆など今後の研究活動をしていく上でとても良い機会になりました。また、普段研究している光通信技術が様々な分野に応用できるということを改めて実感できました。」と語りました。

共同研究者である大東俊博教授は「鎌田さんが主体的に頑張ってくれたことで短期間で今回の研究成果を得ることができました。この研究は、大東研究室の強みである情報セキュリティと高山研究室の強みである空間光通信のコラボレーションにより今までに無い結果を得られたというものです。この2種類の技術が連携して取り組める環境は国内でもほとんど無い貴重なものなので、今後も共同して研究活動を続けていきたいです。」と今後の活発な研究教育活動についての決意を述べました。また、鎌田さんのゼミ指導教員である高山佳久教授は「大東研究室との活動によって貴重な機会を得ることができました。原稿作成に苦労し発表ではずいぶんと緊張したようですが、これらは全て、本人にとって良い経験になったことでしょう。今後も連携を継続して、新たな成果を目指したいと思います。」と述べています。

ICSS研究賞の表彰式は2023年6月21日に佐賀大学 本庄キャンパスで実施されています。

?ICSS研究賞の賞状の授与
プレゼンテーターであるICSS研究会委員長との記念撮影
表彰式での鎌田さんと大東教授の記念撮影
品川キャンパスでの鎌田さん、高山教授、大東教授の記念撮影