内閣府総合海洋政策推進事務局との共催で「海洋状況表示システム(海しる)利活用ワークショップ~静岡の海について一緒に学びませんか?~」を開催しました

静岡キャンパスで12月6日に、「海洋状況表示システム(海しる)利活用ワークショップ~静岡の海について一緒に学びませんか?~」を開催しました。静岡市が面する駿河湾の海域は、海運、水産業、観光などさまざまな経済活動の場として市民の生活を支えています。また、自然環境や生物多様性の恵み、そして地域の歴史?文化を学ぶ貴重な財産でもあります。本ワークショップは、静岡キャンパスの学生を対象に、海上保安庁海洋情報部の職員らを講師に招き、同庁が運営する海洋状況表示システム「海しる」※に掲載された約250種類の海洋情報を参照して、静岡の海の地質やエネルギー資源、気象、生物、防災などについて学ぶとともに同システムの新たな利活用方法を考えるものです。

当日は、海洋学部と人文学部の学生43名が参加。初めに、今年6月にユネスコ政府間海洋学委員会議長に日本人として初めて就任された東京大学大気海洋研究所教授の道田豊氏と静岡市経済局商工部産業政策課の寺田和晃氏による基調講演を実施しました。道田氏は、生態学や経済、社会政策の目標達成のために、海洋におけるさまざまな活動につい時空間的な配置を解析し、適切に空間配置を行うなどする「海洋空間計画」の概要について解説し、ユネスコ政府間海洋学委員会や国の海洋基本計画における海洋空間計画の政策上の位置づけを説明しました。また、寺田氏は、本学も参画する静岡市海洋産業クラスター協議会の活動や、事業化推進事業について触れたうえで、静岡市沿岸域におけるアカモクの養殖、人工海藻シーラントによる漁場造成効果の検証、海洋ロボット実証エリアとして利用しやすい環境の整備といった取り組みについて紹介しました。続いて海上保安庁海洋空間情報室室長で、海洋状況表示システム「海しる」の運用にあたる勢田明大氏がシステムの概要と操作方法を解説しました。

後半のワークショップでは、参加した学生たちがテーブルごとのグループに分かれてパソコンやタブレット端末などで「海しる」を操作。基調講演の内容を踏まえつつ、政策立案者になり切って海洋空間のゾーニングや自然特性の把握といった作業を進め、静岡市沿岸を中心とした海域の利活用方法を検討しました。学生たちは「海しる」上で表示できる地形や地質、水温、海流、漁業権区域、海域利用状況などさまざまな情報を地図上にプロットしながら、アカモクの養殖や海洋ロボットの動作検証に適した海域を探るとともに、新しい利活用方法提案につながるアイデアについて意見を交わしました。最後に、各グループが「海しる」で検討した海域の利活用案とシステムを使って得られた改善の希望などを発表。「アカモクの養殖に適した場所を探る中で、魚類の分布状況といったデータが表示できればもっと使いやすくなるのではと感じました」「地図上に情報を表示させる際に、もっと直感的な操作感がほしいと思いました」「さまざまな情報を同時に表示できて興味深かったが、表示項目に関する説明が少なくユーザー側が推測して表示させなければならない点が気になった」「人文学部の授業ではあまり使用する機会がないが、海域保全や史跡、国立公園などに関する情報もあり、ワークショップはいい経験になりました」などの意見を述べました。

内閣府総合海洋政策推進事務局が拓く海洋状況表示システムの利活用に向けた有識者検討会の委員を務める海洋学部の脇田和美教授は、「検討会では、『海しる』の活用に向けて、民間事業者や地方公共団体等へのヒアリングの必要性をはじめ、新たに搭載すべき機能や情報、同システムのあり方について提言しています。その中で、海洋について学ぶ学生の声も反映したいと今回のワークショップ実施につながりました。駿河湾に面した本キャンパスの学生たちは、学習や趣味で海に出かける機会も多いので、陸上で使うグーグルマップのように『海しる』を活用してもらいたい」と話していました。

※海上保安庁 海洋状況表示システム「海しる」 https://www.msil.go.jp/
“海の今を知るために”さまざまな海洋情報を集約し、地図上で重ね合わせ表示できる海上保安庁が運営する情報サービスで、政府及び政府関係機関が収集?提供している海洋情報を一元的に利用することが可能。日本の周辺海域のみならず、衛星情報を含む広域の情報を掲載するとともに、気象?海象のようなリアルタイムの情報も掲載しています。