平塚盲学校の児童?生徒を対象に造形ワークショップを実施しました

ティーチングクオリフィケーションセンターが9月21日から11月9日まで、神奈川県立平塚盲学校で同校の児童?生徒を対象に造形ワークショップを実施しました。これまで3年にわたり神奈川県と本学が展開してきた「ともいきアートサポート事業」の主旨を受け継ぎ、新たに後継事業として同校と本学が取り組んでいるもので、本センターの篠原聰准教授と「博物館実習2(松前記念館実習)」を履修する学生、大学院生が参加しました。

3回に分けて行ったワークショップでは、「自分の心の顔」をテーマに粘土を彫り込んで石こうを流し込む彫刻制作を実施ました。初回は、彫刻制作の導入として筑波大学芸術系助教の宮坂慎司氏が油粘土と石こうと用いたメダル制作を指導。2回目は児童?生徒が同校の教員やサポート役の学生たちと会話しながらそれぞれにイメージをまとめ、国立民族学博物館教授の広瀬浩二郎氏と彫刻家の高見直宏氏による造形の特別レクチャーや彫刻制作の進め方の説明を実施。高見氏の指導で学生たちがサポート。児童?生徒たちは粘土の塊を掘り進めて型を作り石こうを流し込みました。

最終回の11月9日は高見氏の指導で前回、粘土に流し込んだ石こうを取り出す作業を実施。4名の学生と1名の大学院生が参加し、児童?生徒の作業をサポートしました。大きな粘土の塊がうまくはがせて歓声が上がると、高見氏は「粘土の中から作品が出てきたら、触りながら題名を考えてください」と話し、児童?生徒は竹串などを使って丁寧に粘土を取り除きながら、作品の手触りを確かめました。

続いて、皆で互いの作品を触りながら鑑賞し、それぞれに作品の題名や制作過程を経て感じたことなどを発表し合いました。「遺跡からの出土品」と題した作品を制作した生徒は、「粘土に触ったのは小学校以来です。石こうを固めて作るのは初めての経験で、楽しかったです」と話しました。大きな顔の作品やAIが発達する未来の人間の顔をイメージした作品、50メートル走でタイムが短縮したときの記憶を思い出して表情をかたどった作品など、いずれも個性的な傑作がそろいました。

同校の教員からは、「題名に思いがこもっていてよかったです」「作品が出てきたときの満足そうでとてもよい表情を間近に見てうれしかったです」「3年間にわたり子どもたちの作品を見てきて、成長が感じられました」などの声が聞かれました。同校総務部リーダーの沖津有吾総括教諭は、「皆が一生懸命に粘土を掘ったり作品を丁寧になでたりするのを目の当たりにし、個性がつまった素晴らしい作品が完成してよかったと思います」と話しました。

授業をサポートした学生たちは、「一人ひとりの個性が爆発した作品に出合えて楽しかった」「タイトルもそれぞれに奥深く、作品と見比べてながらずっと飽きずに鑑賞し続けられる」「粘土を掘って石こうを流しこんでつくる作品は凹凸が逆になるので、ある生徒が“点字と一緒だね”と言っていたことがとても印象に残っています。形として現れた作品を見るだけではなく触ることで、作者の世界にぐっと迫れた感触を得ることができました」と話しました。最後に高見氏は「今回の作品は大切にとっておいて、大人になったらぜひまた触ってみてください。“ああ、あのときはこんなことを考えていたのか”など、さまざまな発見や楽しみがあると思います」と話しました。

なお作成した作品は来年、松前記念館(歴史と未来の博物館)で開催される展示会「手の世界制作展」(仮)で、高見氏らの作品とともに展示される予定です。