大学院工学研究科の加々美昌樹さんが「トライボロジー会議2024 秋 名護」で学生奨励賞を受賞しました

大学院工学研究科2年次生の加々美昌樹さんが、昨年10月30日から11月1日まで沖縄県名護市の「万国津梁館」で開催された「トライボロジー会議2024 秋 名護」で学生奨励賞を受賞しました。摩擦や潤滑など機械の表面現象に関する学問領域であるトライボロジーは、機械や部品の低摩擦、低摩耗、表面損傷の低減を実現し、省エネルギー?省資源に貢献するものです。例年、春と秋に開催される同会議では、全国の大学や研究所、企業などによる研究発表やディスカッション、重点研究課題の集中講演などが行われます。学生奨励賞の結果は学会誌『トライポロジスト』(2025年1月号)で発表されました。

加々美さんは工学部の落合成行教授、畔津昭彦客員教授らのもとで、内燃機関の効率化を図る摩擦抵抗軽減の研究に取り組んでいます。2023年に開催された「第13回トライボロジー秋の学校in愛知」では、「マイクロバブル」と呼ばれる小さな気泡が含まれた潤滑油を利用して摩擦を制御するジャーナル軸受内部の油の流れを「フォトクロミズム」によって可視化し、マイクロバブルが潤滑油の流れをコントロールして機械内部の摩擦損失を低減するメカニズムを分かりやすく解説し、ポスター発表賞を受賞しました。

今回は、「フォトクロミズム可視化手法を用いたジャーナル軸受における軸受すきま方向からの流れの可視化(マイクロバブル周りの油膜挙動観察)」をテーマに発表しました。加々美さんは、「これまで軸受面方向の可視化に取り組んできましたが、今回は困難とされてきた軸受すき間方向からの可視化に挑み、理論上、計算で予測されていたマイクロバブルのふるまいの観察に成功しました」と説明します。「軸受すき間方向から見て髪の毛1本ほどの150マイクロメートルと光が漏れないくらいの隙間に流れるマイクロバブルを、どのようにフォトクロニズムで可視化するか、一つひとつの問題を先生方や同級生と話し合って解決し、成功まで約半年かかりました」と振り返ります。

発表にあたり、「聴衆に興味を持ってもらえるよう、先生方からのアドバイスを踏まえてストーリー性を重視しました。可視化に成功したバブルがこれまで数値解析の理論上で予測されていたようにラグビーボール状の形を保ったまま驚くほどの速さで回転している状態の可視化を紹介した際に、企業や研究者の人たちから“おーっ!”と歓声が聞こえました。終了後は多くの人から“本当に回っているね!”と声もかけていただきました。可視化によって理論が裏付けられ、今後の商品開発やものづくりに役立つことを願っています」。

卒業後は、自動車関係の企業に就職。「大学院で得た研究成果や知識を生かしたい」と話す加々美さん。「先輩たちが築き上げてきた素晴らしい研究を引き継ぎ、発展させていくのは大きなプレッシャーでした。何よりうれしいのは、今回の受賞でその責任を果たし、また引き継いでくれる後輩に託せる事です。研究に携わる人たちの思いの熱さは、成果の大きさに比例すると思います」と話しています。