情報通信学部の渡辺晴美教授がこのほど、情報処理学会「コンピュータサイエンス領域功績賞」を受賞しました。同領域において優秀な研究?技術開発、人材育成および研究会?研究会運営への貢献など特に顕著な功績のあった研究者に贈られるもので、渡辺教授の受賞は、長年にわたり組込みシステム分野の教育?研究開発を主導し、発展に寄与してきた功績が高く評価されたものです。
渡辺教授の専門は情報技術で、組込みシステム技術に関する研究の活性化を目的として、2006年に同学会内に設立された組込みシステム研究会(SIG-EMB)の結成に尽力。活動の中核をなす組込みシステムシンポジウム(ESS)の立ち上げを担い、実行委員長として組込みシステム全般に関する幅広い領域の研究者?実務者の交流を促進したほか、組込みシステム技術研究教育の場を提供するなど実践的な教育の場の創出にも貢献。特に、ロボットチャレンジと呼ばれる教育が評価され、文部科学省「成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成(enPiT2)」の連携校代表を務めました。さらに学会の国際化を目指し、17年からAsia Pacific Conference on Robot IoT System Development and Platformを立ち上げ、24年までGeneral Chairを務めています。

渡辺教授は受賞について、「組込みシステム分野の教育を発展させるために、『ロボットチャレンジプロジェクト』というPBL(Project Based Learning=課題解決型学習)形式の実務教育を導入した折には、情報通信学部の学生?大学院生たちがさまざまな大学の教員たちと一緒に教材づくりに取り組みました。当時の学生たちは今、国内外のトップ企業や大学、研究所などで活躍しています。そうした卒業生の縁でタイの技術者育成といった学会の国際化も実現。研究のみならず一連の教育プロジェクトとして評価されたことは光栄です」とコメントしました。
「Chat GPTといった生成AIの登場でソフトウェア分野は今後もめまぐるしく変化しますが、コミュニケーション力はますます重要になります」と渡辺教授。今後の展望について、「例えば、アジアの人材と共に働くために身に付けるべき英語には、母国語ではないもの同士の呼吸も必要です。その点、英語力の上達が目覚ましい東海大生のポテンシャルは高く、これから現場で求められる目線を合わせるコミュニケーションなど、素直で協調性が高い東海大生の能力が存分に発揮される場面が多くなると期待しています。加えて、ドイツの大学で研究に携わった経験から、ユーザーの視点に立って課題解決を図る“デザインシンキング”の力を育成する重要さも実感しています。今後も従来の日本の教育システムに風穴を開けながら、生成AIの活用を含め、ゴーグルを使うVRなども積極的に取り入れ、五感を活用してコミュニケーション力とデザインシンキングを重視した教育に取り組んでいきます」と話しています。