海洋理工学科の横山助教が海洋掘削船「JOIDES Resolution」に乗船しました

海洋学部海洋理工学科海洋理工学専攻の横山由香助教が、8月13日から10月13日まで海洋掘削船「JOIDES Resolution」に乗船。多国間科学共同プログラムである国際深海科学掘削計画(IODP)の第400次研究航海として、グリーンランド周辺のバフィン湾での「北西グリーンランドの氷床史と気候変動」プロジェクトに研究者として従事しました。地球温暖化による将来の海面水位上昇が危惧される中、グリーンランド氷床が完全に融解した場合、海面は約7m上昇すると言われています。今回の航海は、北西グリーンランド縁辺域の6つのポイントで過去3000万年前までの地層を掘削して極域の気候変動などの古環境を復元することで、過去の気候変動においてグリーンランド氷床がどのように反応して海面水位変動に関与したのかを明らかにし、将来の気候変動や海面変化の予測における知見を得ることを目的としています。

JOIDESでは24時間、掘削と分析が行われており、世界各国から参加した27名の研究者たちがチームに分かれて作業に当たりました。横山助教は物性科学チームに所属し、海底から引き上げられた約10mの管を技術者が約1.5mずつに切り分けた後、自然ガンマ線などを用いた非破壊分析にかけて硬さや目に見えない堆積構造などを調査。その後、技術者が縦に半割した管からサンプルを取り、基礎的な解析を船上で行いました。

本学部の卒業生で、昨年度から本学科に着任した横山助教はこれまで、岩手県大船渡市や陸前高田市で東日本大震災の津波堆積物の調査などに取り組んできました。「IODPへの参加は深海掘削分野研究の登竜門とも言われており、各国の研究者と意見を交わし、さまざまな手法や考え方を学ぶチャンスだと思い参加を決めました」と振り返ります。今回の航海では6つのポイントを調査し、「石(礫)が多い場所、縞模様が入っている場所、粒度の違いなど、目に見える堆積物の“顔つき”はさまざまで、X線画像解析(レントゲン写真のようなもの)で目に見えない構造のデータも取れました。物性科学チームが作業した後は、堆積物記載(スケッチ)からDNA解析用試料採取まで多彩な調査が行われ、データはすべて船内ネット上で瞬時に共有されます。6つのポイントには似ているところや事前の想像とは違うところもあり、持ち帰ったデータを分析してより研究を深めていく必要があります」とコメント。現在、各研究者が自身の研究テーマや目的に沿ってデータを分析するとともに、3月にはドイツのコアセンターに今回乗船した研究者が集合し、各自の目的に沿って必要な試料を分配するとともに、情報共有や意見交換などをする予定となっています。

横山助教は、「陸上では変化が進んでいても、海の中は当時の環境を示す堆積物が重なり、多くのデータが残っていることがあります。それらを解析することで、地球温暖化の抑制、防災などに貢献していきたい」と話しています。