海洋学部では5月7日から7月16日まで、今年4月に着任した8名の教員による「海洋学部着任セミナー」を4回にわたって行いました。教員の研究内容や得 意分野を学部内の教員に周知し、学科横断的な研究を促進するとともに、本学部の広報活動につなげることを目的に昨年度から開催しているものです。
5月7日には小松大祐講師(海洋地球科学科)と泉庄太郎准教授(水産学科生物生産学専攻)が講演しました。小松講師は硝酸の三酸素安定同位体組成に着目 し、海水中の窒素循環を把握する研究を紹介。海面に近い有光層に含まれている同組成を定量化することで、有光層の外から新たに供給される硝酸の総量を算出 できる可能性があることを説明しました。また泉准教授は「国内のアユに甚大な被害をもたらしている冷水病の病原菌が、欧米でサケ?マス類の疾病として知ら れている同名の病気の原因菌と同じ物であるかを血清型による型別で明らかにする研究を紹介しました。
6月4日の第2回では、田中克彦講師(海洋生物学科)と木山克彦講師(清水教養教育センター課程資格教育)が登壇。田中講師はダンゴムシに近い甲殻類の一 種ウミクワガタ類の生息場所の利用法や特徴的な繁殖行動について国内で得られた知見をもとに講演しました。一方木山講師は、北海道からロシア、中国東北 部、モンゴルの幅広い地域の先史時代から中世期を対象に考古学的な視点から取り組んできた調査研究について語りました。
第3回となる6月25日は、西川淳教授(海洋生物学科)と鉄多加志講師(海洋フロンティア教育センター)が担当。西川教授はクラゲなどの体の柔らかい動物 プランクトンを対象にこれまで取り組んできた研究を紹介し、東京電力福島第一原子力発電所の事故にともなって発生した放射性物質が海洋生物に与える影響な どを説明。鉄講師は、水中映像や画像を記録としてまとめたものを、初等教育に活用する方策に関する基礎研究を紹介しました。
最終回の7月16日では、脇田和美准教授(海洋文明学科)と福田厳講師(航海工学科航海学専攻)が講演しました。脇田准教授は、多様な生物がかかわり合う 生態系から人間が受ける恩恵(海洋生態系サービス)を日本人がどのように認識し、海洋環境保全活動の行動意図にどう影響しているかに関する調査研究の成果 を紹介。福田講師は、さまざまなセンサや電子回路を一つの基板上に集積した「MEMSセンサ」を用いて取り組んできた研究の概要や、日本と韓国の航海系学 科に所属する中での自身の経験について語りました。
各回とも多くの教職員?学生が参加し、終了後には講演者を交えての茶話会も行いました。
【講演論題】
5月7日
小松大祐講師(海洋地球科学科) 「硝酸の安定同位体組成を用いた硝酸の高精度期限推定法と新生産量定量への応用」
泉庄太郎准教授(水産学科生物生産学専攻) 「冷水病原因菌Flavobacterium psychrophilumの血清型による型別:冷水病の感染疫学的研究」
6月4日
田中克彦講師(海洋生物学科) 「ウミクワガタ類の生息場所利用と繁殖生態」
木山克彦講師(清水教養教育センター課程資格教育) 「北東アジア考古学研究における私的現在」
6月25日
西川淳教授(海洋生物学科) 「海のやわらかい生き物を追いかけて」
鉄多加志講師(海洋フロンティア教育センター) 「初等教育時の海に興味を持たせる教材の研究」
7月16日
脇田和美准教授(海洋文明学科) 「海洋生態系サービスに対する認識と海洋環境保全行動意図との関係~日本人の場合」
福田厳講師(航海工学科航海学専攻) 「MEMSセンサを用いた研究と航海科における自身の経験」