農学部では10月5日に、阿蘇くまもと臨空キャンパスで「熊本ヤーコンサミット2024」と題した研究会を開催しました。このイベントは、南米アンデス高地原産のキク科の植物であり、地域特産の農作物「ヤーコン」※の普及や研究を目的として、農家を含む産官学が連携して全国各地で定期的に開催されています。本学部では、熊本県内でヤーコンの系統維持や品種改良、栽培法の研究を続けているほか、熊本県菊池市との交流協定書に基づく連携事業を通じて茎葉の健康食品や家畜飼料としての利用も進めています。今回は、本学部におけるヤーコン研究の最新情報や、資源活用の発展に向けた知見、ブランド化に向けた取り組みについて広く発信することを目的に企画しました。
当日はまず、日本ヤーコン協会の児玉治会長があいさつし、「本日の演題は魅力あるテーマばかりであり、意見交換を通じてヤーコンの認知度向上や世界への情報発信につなげたてもらうきっかけになれば」と期待を語りました。続いて本会の実行委員長でもある松田靖准教授が登壇。「熊本におけるヤーコンの栽培、研究に関する報告」をテーマに、まず当時の阿蘇キャンパスで2000年ごろから試験栽培を開始し、本学部のモニター農家制度を活用して菊池市などの農家で栽培が始まった経緯を紹介。2007年に菊池市と本学が結んだ「農業に関する交流協定」に基づいて本学部制が同市の農家でヤーコン栽培に取り組んできた過程や、産地としてのブランドイメージ確立に向けた収穫ツアー、成分分析、加工品開発といった活動について振り返り、「ヤーコン自体の認知度向上のために加工品からのアプローチを充実させていきたい。また育種の展開として、現状4つにとどまっている品種の増加が目標であり特に耐暑性が向上した品種ができればと考えています。また、機能性が充実した品種も目指したい」とまとめました。
大学院農学研究科1年次生の赤城さんは、γ線を照射して変異を促した育種の試験栽培の結果について報告。作付け地を標高の高い阿蘇フィールドから臨空キャンパスに移したことで猛暑の影響を受けた様子や耐暑性の高い品種、商業化を視野に置いた塊根数の変動から見る気温の高い土地に適した品種の分析と野生型との比較、糖度調査の結果などから、「高温環境かつ平地においてγ線照射個体が収量や均一性、糖度などで勝っている」と語りました。続いて登壇した本学大学院農学研究科修了で尚絅大学生活科学部助手の上田裕人氏は、ヤーコンの葉が含むポリフェノールとその抗酸化作用やヤーコンの葉を有望な機能性食品素材として確立させるための研究について語りました。本学の椛田聖孝名誉教授は「ヤーコン等未利用資源を活用した機能性飼料の開発」の現状について解説しました。さらに、農学部と共同でヤーコンのブランド化を進める菊池市役所農政課ブランド推進室の山下祐一郎氏が、同市内におけるヤーコン栽培の現状や、ヤーコンを味わえるレストラン、レシピをまとめた冊子の配布といった活動を紹介しました。
終了後には、来場者が臨空キャンパス内の圃場におけるヤーコン栽培の様子を見学。近年の夏の猛暑などを受けた耐暑性の高い品種開発に期待の声が寄せられました。さらにキャンパス内のオープンキッチンで懇親会が実施され、登壇者や学内外の研究者、農学部の星良和学部長らが出席。今後の研究やヤーコン栽培のあり方について熱心に意見を交わす姿が見られました。
当日のプログラムは以下の通りです。
「熊本におけるヤーコンの栽培、研究に関する報告」
○農学部農学科?松田靖准教授、増田優講師、bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户?村田達郎名誉教授
「ヤーコンにおけるγ線照射を用いた突然変異育種の展開」
○大学院農学研究科1年次生?赤城正崇さん、農学部応用植物科学科卒業?大江一生さん、大学院農学研究科修了?奥野元輝さん、農学部?増田講師、bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户?村田名誉教授、農学部?松田准教授
「ヤーコン葉におけるポリフェノール含量と抗酸化作用について」
○尚絅大学生活科学部栄養科学科助手?上田裕人氏、農学部食生命科学科?安田伸教授
「ヤーコン等未利用資源を活用した機能性飼料の開発」
大学院農学研究科修了?三木晶琴氏、○bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户?椛田聖孝名誉教授
「菊池市におけるヤーコンのブランド化に関する取り組み」
○菊池市役所農政課ブランド推進室?山下祐一郎氏
○=発表者
※ヤーコンは1984から1985年ごろ、日本に導入された特に冷涼な地域で栽培される希少な作物です。ジャガイモやトマトなどと比べて日本での栽培の歴史は浅いものの、その塊根には、消化されにくいフラクトオリゴ糖が豊富に含まれ、甘味のある健康食材として近年注目されています。